第3章 絆 「炎帝ロゥズル⑩」
「ふむ···いろいろと話をしたいところだが、まずは我の長年の課題を優先させてもらうぞ。」
炎帝ロゥズルはそう言うと、ファフに向き直った。
「さて、ファラフナーズよ。先ほども申したように、我にはそなたの先の事が気がかりだ。」
「先の事···ですか。」
「そうだ。使命云々と、堅苦しく考える必要はない。我の見立てでは、こやつはグルルの後継者として相応しい稟性を持っておる。託宣で聞いておったこともあるが、実際に逢着して理解した。人としては、まだまだ未熟かもしれぬが、そこは助力する者が補えば良い。それは、そなたにも同じことが言える。」
「··········································。」
「タイガを加勢したいのであれば、再び力を持つが良い。」
躊躇うような表情で押し黙るファフだが、それを見る炎帝ロゥズルの瞳には、我が子を慈しむような優しさが感じられた。
炎帝ロゥズルが持つ怒の情は、人間社会で言うなら負の感情である。しかし、黒虎スワルトゥルの言葉で指すなら、神かそれに等しい存在の怒とは、悪しき心や負の感情を浄化するものに位置づけられるそうだ。
これは元の世界の宗教でも、同じように扱われている。
仏教では、人間の煩悩の内の三毒といわれる貪・瞋・癡を許さない慈悲の極みが、憤怒として表されていたりするのだ。
揺るぎなき守護者の象徴である不動明王などは、人々を煩悩から救い出すために憤怒の姿をしているという一説がある。
何となくだが、俺は炎帝ロゥズルに、不動明王に通じる面影を見た。
優しさゆえの怒の情。
見ていて、自らの内面の負も浄化されるようで心地いいものがあった。
「···至らぬ存在ですが、再びあなたの加護をいただきたく思います。今度こそ、それを全うし···。」
「良い。その堅さが、かつてのそなたを苦難に導いた。もっと徒疎かでかまわぬのだ。あやつのようにな。」
炎帝ロゥズルはそう言って俺を見た。
ファフもつられて俺に視線をやり、やがて相互を崩した。
「·········································。」
流れとしては良いのだろうが、徒疎かと言ったよな?
それって、確か『いいかげん』という意味だろ。
遠回しに俺をディスって比喩に使うとは···炎帝ロゥズル、俺の畏敬の念を返せと言いたいぞ。
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