第3章 絆 「炎帝ロゥズル⑥」
炎帝ロゥズルとは、どこに行けば出会えるのか?
これについては、はっきりとわかってはいない。
黒虎スワルトゥルですら、他の四方の守護者の居場所については互いに情報交換をしているわけでもなく、はっきりとその場所に目処がつくわけではないらしい。
ただ、マルガレーテやファフならば、近くにいれば他の加護者について感ずるものがあるだろうとのことだった。
近くとは言っても、どのくらいの距離かはわからないし、炎帝ロゥズルの加護者が今現在存在しているかについても不明だ。
要するに、炎帝ロゥズルと出会うためには、相当な広範囲を探索する必要があるとのことなので、雲をつかむような話となる。
とりあえずは神界に至るという神殿に向かい、その道程で何か感ずるものがあれば、周辺を調査するという方針にしている。
優先順位というものはないが、悠長に旅をしているわけにもいかないので、できることから手をつけていくしか手段がないといった具合だ。
「平穏だな。」
御者台で隣にいるファフがつぶやく。
黄昏の森を出て以来、何事もなく進んでいる。順調だが、何の手がかりもなく、ここまで来ている。
ファフは表面には出さないが、わずかに緊張していると感じられた。
炎帝ロゥズルと会い、まずは話をしてみる。ファフが選んだのは、そういうことらしい。
俺と行動を共にすることは、そのまま継続するつもりのようだが、炎帝ロゥズルと邂逅することができれば、その時の流れから今後どうするかの決断をしようと考えているようだった。
「そうだな。この辺りには詳しいのか?」
「あまり詳しくはないな。過去では、この辺りに滞留することはなかった。俺の故郷はもっと南だしな。」
「そうか。」
「故郷には何もないだろう。襲撃で壊滅してからは、かなりの歳月が経過している。新しく村でも興っているかもしれないが、そこには俺の知る者などいるはずもないしな。」
遠い目をするファフ。
感傷や自身を責める気持ちがあるのかもしれない。
ぽふっと頭に手をのせた。
「つきあいは短いが、俺はファフの人柄を気に入っている。力になれることがあれば、何でも言ってくれ。」
自然とそう答えていた。
「···最近になって、ようやくあんたの性格が少しわかるようになった。」
少し照れたような表情で、そう語るファフ。
「そうなのか?それは興味深いな。」
自己分析はするが、それは自身の持つ力や精神的な耐性についてだけだ。
俺の性格がどんなものかは、自分で振り返ることなどあまりなかった。
「ロマンス民族に似ている。」
「ロマンス民族?」
「広域だが、ある共通言語を話す民族のことだ。」
「それに似ているというのは、何か特徴的な気質でもあるのか?」
「ある。」
「興味が惹かれるな。」
ファフがニヤッと笑った。
「あんたはきっちりとしているところがあるから、すべてがそうではないが、ロマンス民族というのはマイペースで思ったことをストレートに言葉に出す。」
「そうなのか。」
「あと、少し恥ずかしい言葉をよく使う。」
「恥ずかしい言葉って···まさか恥語か?」
「わざと言っているだろ?そんな民族がいるか。」
「冗談だ。」
ファフが話しているロマンス民族というのは、日本でいうラテン系というものに近いのかもしれない。
彼らは日本人とは違い、奥ゆかしさとは対極にいると言っても良い。
悪い意味ではなく、自分の感情や主張に忠実な気質で、コミュニケーション力が高いと言えた。
因みに、洋画などで出会ったばかりの男女がすぐにベッドインするようなシーンがあったりするが、海外ではそれほど不思議なことではない。
特にラテン系では体の相性を大事にしたりするので、そういった関係から先行して恋愛に発展することが多いといえるのだ。
まあ、地域性といえばそうなのだろう。
俺はファフと何でもない雑談を交わしながら、自走式馬車を操り続けるのだった。
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