第3章 絆 「悪魔バフォメット⑧」
視界が広げた先に、ソイツがいた。
邪悪な紫の影とでも言うべきか。
不規則に蠢き、苦しみ悶えるような動作のように見える。
俺はHGー01を空間収納に戻し、全身に竜孔流を巡らせた。
両手に強くシアルの膜を張るように纏わせて、目の前の影に歩み寄る。
おもむろに影を両側から挟むように、両手で鷲掴んだ。
「ぐぅ···ぐうぉぉぉぉぉーっ!」
重苦しい叫びのようなものが響いてくるが、それは音ではなく、両手から骨を伝わるように届いてくる。
「悪魔バフォメットだな?」
「ぐ···ぐうぅぅ···。」
さらに濃密なシアルを放つ。
「や···やめ···。」
シアルはグルルの霊力そのものだ。精霊レーシーや、他の悪魔と同じようにかなり有効のようだ。
「何してくれてるねん。」
俺は冷めた目で見下ろしながら、徐々に力を込めるようにシアルを強めていく。
危なく、貞操の危機に陥るところだった。
奴が最後まで完璧な女性を演じていたのなら、俺は堕ちていたかもしれなかった。
しかし、股間のモノはないだろう。
元の世界でも、似たような状況が何度かあったが、俺はそんなふうに迫り来る野郎に対しては、一片の情けもかけないことにしている。
なぜかって?
それは当たり前だろう。
俺にそんな趣味はない。
むしろ、瞬殺すべき対象と言うべきだった。
しかし、悪魔バフォメットに対しては、尋問くらいはしておかなければならない。
もちろん、隙を作らないように、ギリギリの負荷をかけておく必要があった。
「き···貴様···な···なぜ堕ち···ない···。」
アホかコイツは。
「堕ちる?なぜ堕とされる必要がある。」
「グ···グルルの気配を···感じたのだ···貴様を···堕とし···取り込めば···目的···がああぁぁぁぁーっ!」
おぞましい話だ。
俺を取り込むために、邪淫の術みたいなもので堕とそうとしたというのか。
「純潔の男を拐わせたのも、それが目的か?」
「ち···力のない···者を···さら···拐っても···そんな風には···使え···ない···。」
「じゃあ、何のためだ?」
「しゅ···趣味だ···。」
···怖ぇぇ。
純潔の人間を拐わせて、淫らな行いをして情欲を満たすというのか。
クリス···どうやら、おまえに大きな貸しができたようだ。
「それはまあいい。目的というのは何だ?」
「だ···だから···我の猛々し···い欲望···をギャァァァぁ!」
「そっちじゃない。俺を取り込もうとした目的の方だ。」
「じ···実体化···すれば···かつ···ての力···を···ある程度···取り···戻せる···そう···そうすれば···我が···新たな···悪魔王にぃぃぃぃーっ!!!」
「安らかに眠っとけ。」
俺は加減なしでシアルを解き放った。
はた迷惑な悪魔には、永眠を貪ってもらおう。
「ひぎぃあああぁぁぁぁぁぁ···。」
悪魔バフォメットが断末魔の叫びをあげ、そのまま影自体も消えていった。
恐ろしい相手だった···。
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新作、「芒星の勇者 ~勇者として召喚されたけど、好き勝手に生きて何が悪い~」も同時連載中です。こちらもよろしくお願いします。
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