第3章 絆 「黄昏の森⑮」
「タイガ。」
広場が間もなく目前に迫る頃合いに、アヤが声をかけてきた。
「状況はどうなっている?」
「どうもこうもない。あのマルガレーテという女が、上空から剣の雨を降らせてきて場は騒然としている。」
さすがというか、マルガレーテらしいというか···。
「クリスは?」
「無事だ。何かの儀式の生け贄にされそうになっていたが、そのタイミングで空からの攻撃が始まった。」
「そうか。マルガレーテのファインプレーということだな。」
マルガレーテや他の3人には、まだアヤの存在を話してはいなかった。
もし、アヤが竜の姿となって交戦していたなら、マルガレーテはアヤごと殲滅を試みた可能性すらあったということだ。
「そんなことよりも、予想外の精霊が出た。」
「予想外って、精霊レーシーじゃないのか?」
「精霊レーシーは姿を現していない。ロビン・グッドフェローだ。」
「ロビン・グッドフェロー?」
「妖精王の1人であるオーベロンの息子だ。」
またややこしいのが出てきた。
「その妖精王が何かを企てているということか?」
「そこまではわからない。だが、ロビン・グッドフェローとレーシーが敵に回ったのは確実だ。」
精霊の力というものは、どれだけのものなのかは計れない。知識がないこともあるが、過去の記録にもほとんど載っていないからだ。
「ここに来るまでに、真っ白な頭髪と長い髭をした巨人と出くわした。強い霊力を持っていたようだが、そいつが何者なのかはわかるか?」
霊力があるのだから、精霊か妖精ではないかと思ったのだ。
「それは精霊レーシーだ。闘ったのか?」
「倒した。」
「···そうか。倒せたのか。」
アヤは何か含みのあるような言い方をした。
「何かあるのか?」
「レーシーは巨体だが、森の中では人の目では捉えられない速度で移動をする。」
「確かに、実体を捉えるのに苦労をした。」
「さすがは継承者だな。だが、これで敵はロビン・グッドフェローだけということになる。」
妖精王オーベロンが加担しているか、裏で糸を引いている可能性があるわけだが、とりあえずは目前のロビン・グッドフェローに集中することにする。
それにしても、ファンタジーすぎる展開に動じなくなった自分を思うと、ずいぶんと異世界に馴染んだものだと実感するのだった。
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