第3章 絆 「黄昏の森⑪」
マルガレーテとの簡単な打ち合わせを終えると、俺は再びクリスが捕らえられている広場へと向かった。
マルガレーテには空からの監視と援護を依頼したので、行動はそれぞれに別だ。
ファフとソルは自走式馬車をそのまま放置しておく訳にもいかないので、その場に留まってもらっているそうだ。
短期間とはいえ、修練を積んだソルは、中級レベルの魔法をそれなりの精度で扱えるようになった。
先天的に保有する魔力量も多いため、マルガレーテから見ても目を見張るほどの実力を伴っている。
万一、自走式馬車を破壊しようとする者がいても、ファフとソルのコンビで切り抜けることは難しくはないだろう。
それよりも、考えるべきは妖精パックと精霊レーシーへの対処法である。
戦いになった場合、物理攻撃が有効なのか、もし無効だというのなら竜孔流で対抗ができるのか。
妖精や精霊という存在については知らないことが多すぎた。
慎重さにかけたといえば、その通りだと思う。
未知の相手に対する準備というものは、どんな状況でもやり過ぎるということはなかった。
「アヤ、話せるか?」
まだ距離があったが、念話を送ってみる。
この程度の距離ならば、通じるであろうことは確認をしていた。
だが、応答はない。
念話というが、使っているものは霊力なのだとアヤが言っていた。
距離が離れれば、使用する霊力もそれに比例して消耗をするものだとも聞いている。即ち、相手にも感知されやすいということだ。
念話を使うには、支障がある状況なのか。
もしくは、返答ができないようなトラブルが生じたのか。
はっきりとしないことに気をやり過ぎるのはナンセンスだ。
しかし、より慎重になることが無駄とは言えない。
俺は気配を出さないように細心の注意を払いながら、可能な限り最速で移動をする。
森は彼らのフィールドだ。
そこに異分子として存在するのは、自分の方であるという認識を忘れてはならなかった。
「!?」
突然、誰かに見られている気がした。
動きを止め、ゆっくりと視線を動かしながら、同時に気配を探る。
視界には何も映らない。
だが、何者かがいることは間違いがないようだ。
かすかな違和感と勘が告げていた。
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