第3章 絆 「黄昏の森④」
「申し訳ありません。見失いました。」
すぐ近くに降り立ったマルガレーテが声をかけてきた。
「いや、こちらも同じだ。急に気配が消えた。」
ソート・ジャッジメントに反応はない。
周囲に視線を配りながら同時に気配を読むが、まるで最初から何も存在しなかったかのような感じだった。
「何者でしょうか?」
「人の類いではないかと思うが、特定はできそうもないな。」
そう返しながらアヤにも視線を送るが、彼女も首を振るだけだった。
「あまり分断されているのは良くないな。一度戻ろうか。」
マルガレーテにそう伝えて、俺たちはその場を後にした。
自走式馬車の所に戻ったが、異変が起きた様子はない。
外で警戒をしていたファフと目が合うが、彼女も首をゆっくりと振るだけだった。
俺のソート・ジャッジメントとファフの魔眼による索敵は、それなりに高い効果を発揮する。
その両方が機能しないと考えると、敵は本当に姿を消したと思う他はなかった。
「エージェント・ワン。」
クリスがSGー02に視線をやりながら、こちらに声をかけてきた。
「どうした?」
「この銃の弾薬があれば、一つもらえないか?」
「なぜだ?」
「空薬莢を見たが、なかなか興味深い。火薬の代わりに魔石を流用しているのだろうが、その配合率について調べたい。」
「かまわないが、それほど興味をひかれるものではないかと思うが。」
「薬莢の破損具合から見ると、単一属性の魔石を使用しているのだろう?これは他の属性のものを配合することで、飛躍的に威力を高めることができるかもしれない。」
なるほど、と思った。
火薬の代わりとして爆発が生じる火属性の魔石だけを使用しているが、他の属性を交えることで化学反応的な結果を生み出そうというのだろう。
科学者らしいと言えばそうだが、こちらにはなかった発想だ。
「わかった。弾丸の違いによって魔石量は変えてあるから、後ですべての種類の弾薬を渡す。」
「試作品は設備が整った所でしか作れないが、それまでに理論値ははじき出しておこう。」
こういった知識においては、俺の知る限りクリス以上に秀でた者はいなかった。
戦う相手が相手だけに、ほんの数パーセントの上積みであったとしても、火力が上がることは歓迎すべきことだと言えた。
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