第3章 絆 「黄昏の森③」
10分ほど進んだ頃だった。
自走式馬車の周囲で弾けるような音が連続する。
バチバチと断続的に鳴る音は、強い雨を受けるガラスのそれに酷似していた。
「攻撃を受けているぞ。それほどの威力ではないが、障壁の全体に渡っている。」
クリスが冷静にそうつぶやいた。
「耐えられそうか?」
「今のところはな。あまり連続すると厳しいだろうが···。」
敵の正体はわからない。
複数体が一定の距離を保ちながら、周囲を飛び回って攻撃をくわえているのは感じられた。
攻撃の威力はそれほどでもないが、動きは素早く、的確に狙い撃つというのは難しそうだ。
威嚇射撃で牽制するかと考えた時に、客室からマルガレーテが声をかけてきた。
「私が出ます。」
そう言ったと同時に、マルガレーテが扉を開けて真上に飛ぶ。
俺はすぐにSGー02を顕現させてトリガーを引いた。
気配の感じる所に手当たり次第に連射を行い、マルガレーテを援護する。
ダァーン!ダァーン!という発射音を響かせながら、SGー02がスラッグ弾を吐き出していく。
着弾地点で木々が弾け、土を跳ねあげる。
ミシミシという木のへし折れていく音が何ヵ所かで起こり、銃身の右側から排出された空薬莢が地面に当たって転がっていった。
オリジナルと同等の使用感とスムーズな動作を感じながら、12発を射ちきったSGー02を冷却のために置いて、気配の方へと疾走した。
敵はいずれも逃走に転じたようだった。
頭上からのマルガレーテの攻撃と、俺の横合いからの援護射撃を見て、不利と感じたのかもしれない。
殺気は消え、分散して遠ざかろうとする姿をとらえるためにスピードをあげる。
だが、100メートルも進まないうちに、その気配は霧散するかのように消えてしまった。
SGー01を構えながら、無意識にクリアリングをしていく。
クリアリングとは、エリアに敵が隠れていないか、脅威がないかの安全確認を行うことをいう。
これは特殊部隊や警察などが使用する用語と技術ではあるが、これを怠ると命取りになるほど重要なルーティンなのは言うまでもない。
度重なる訓練により磨いてきた技術ではあるが、こういったこともエージェントにとっては必須科目だったりするのである。
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