第3章 絆 「黄昏の森②」
最初に、アヤが違和感に気づいた。
俺の肩に乗ったまま首をキョロキョロと動かし、落ち着かない雰囲気を出していたのだ。
続いて、俺とファフがほぼ同時に多数の気配を認識する。
俺はソート・ジャッジメントで邪気を感じ、ファフは魔眼で微かな殺気をとらえたという感じだ。
「タイガ。」
「ああ、わかっている。」
ファフが客室から声をかけてきたので返答し、念話でアヤに詳細を確認した。
「何がいると思う?」
「わからない···霊素が異常なほど不安定だ。この森にも複数の精霊がいるのは感じるけど、ひどく怯えているみたいだ。」
精霊であるアヤとは違い、俺には霊素そのものを感じることはできない。
強いものであれば竜孔流を目に流すことで可視化することもできるが、自然の中に漂うような微弱なものは感知できなかった。
「状況的に、常態化しているものかどうかはわかるか?」
周囲は木々が生い茂っている。
この辺りは黄昏の森と呼ばれている地域ではあるが、数十年前までは旅の往路として利用されていたようだ。
この森を外れた所に広い道が整備されて以来、交通量は減っていると聞くが、不穏な場所ではなかったはずだ。
俺たちは目的地への最短通路として、この森に立ち入ることになったのだが、危険があるような噂すら聞くことはなかった。
ただ、しっかりとした道ができてからはあまり利用をされていないようなので、何かの異変が生じていたのだとしても気づかれなかった可能性もある。
「常態化しているのなら、精霊たちは別のところに移っていたはずだ。最近になって、何かが起こったのではないかと思う。」
「ここ数日の間に、ということか?」
「そこまではわからない。基本的に、精霊は簡単には居を移したりはしないから、数週間から数ヵ月前からという可能性もある。」
この辺りは王都からまだそれほど離れた位置であるとは言い難い。直近のことであれば、悪魔や魔族絡みと考えることもできるが、断定できる材料は何もないということだ。
「クリス、徐行で進んでくれ。何かはわからないが、嫌な気配を感じる。」
アヤの返答を聞いてからすぐに、クリスにそう告げることにした。
「了解だ。念のために、障壁を展開しておこう。」
「障壁?」
「この自走式馬車には、ある程度までの物理、魔法に対抗する障壁システムを装備している。それほど強力なものではないから、気休め程度ではあるがな。」
さすがだ···。
伊達に天才を自称しているわけではないようだった。
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