第3章 絆 「クリストファー・コーヴェル⑧」
クリスへの武器開発の依頼は終わった。
資材や研究する施設などをすぐに供給できるわけではないが、それまでの間に具体的なアイデアを捻り出してくれることだろう。
俺はクリスに、これまでに製作した銃器の詳細を伝えた。
悪魔を屠ることのできるHGー01や、多目的で使えるSGー02に関する構造や魔石の流用については、すぐに理解に及んだようだ。
ただ、竜孔流や空間収納については、具体的な事象に至るまでの過程がクリスの常識外であるため、その説明に相当な労力を要してしまった。
神や超常現象を信じないクリスに、神威術や神竜神獣のことを説いても、妙な視線を向けられるだけなのは仕方がないことなのかもしれない。
より詳しい説明をしたところで徒労に終わると判断し、その力を活かせる素材や、必要な処理について伝えるに留めておいた。
因みに、魔石や魔法の属性などについては、俺なんかよりも理解が深い。
こちらの世界で生を受け、幼少期から触れてきたことが影響しているのだろうが、元の世界の基準で考えれば魔法そのものが超常現象には違いない。
「神に関することも、根本は同じじゃないか。」とツッコんでみたが、そこはやはり否定的な意見で返された。
「そもそも、エージェント・ワンはホルダーという超人ではないか。我々のような常識人とは、元から思考が異なっているのだよ。」
との事だが、自らを常識人と名乗っていることに無理があることに気づけよと、何度言いかけたことか···。
「はあ···。」
客室に移動してから、深々とため息を吐いた。
クリスとの会話は、精神的な疲労を蓄積する。
今に始まったことではないが、異世界で再会しても、その印象は拭えなかった。
ただ、今後の戦いにおける武器の調達という一点においては、頼りになる援軍であることに違いはない。
人間性を信用する訳ではないが、その技術や発想については大いに期待させてもらうことにした。
「ずいぶんと疲れた顔をしてるね。」
ソルが軽く濡らした布を手渡してくれた。
「ありがとう。」
ちょっとした気遣いがうれしかった。
軽く笑みを見せたソルは、ファフやマルガレーテの所に戻り、何気ない会話を再開させる。
彼女のそういった自然な振る舞いを見ていると、自分のこれまでの行動がちょっとした成果を出しているのだと感じられた。
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