第3章 絆 「クリストファー・コーヴェル③」
「イーリッヒ家というのは、歴史が古いのか?」
「古いと言えるだろうね。残っている記録から推察すれば、500年以上前にすでに商会として確立していたのだから。」
テトリアに経済的な支援を行っていた一派なのかもしれない。
「商いで成り上がったのか?」
「もともと鍛治から身を起こして、魔石の加工や武具の流通で規模を大きくしていったらしい。まぁ、一気に名を馳せたのは、神に選ばれし英雄に協力したからだと聞いているが。」
「その英雄の名は?」
「テトリスだったかな。あまり興味がないから、はっきりとは覚えていない。」
別にかまわないが、それは落ちゲーの名前だろう。
まぁ、クリスにとって、人は被検体程度の認識しかなさそうだからな。
「協力というのは、どのような内容だったかわかるか?」
「はっきりとは記述がなかったが、聖剣とかその類いのものを提供したようなことが書かれていたと思う。そんな不合理なものがあるはずがないと、笑わせてもらった記憶がある。」
この男にとって、聖剣よりも軍事兵器の方が現実味があって理解がしやすいのだろう。
信心深い者が多い国の生まれなのに、「祈りを捧げる時間があるなら、新しい配列数式を考えた方が世の中のためだ。」と言い放つような男だ。
そんなクリスにとって、神に選ばれし英雄であるテトリアなど、胡散臭い存在でしかないのだと思えた。
しかし、少なくとも因果関係があることがわかった。
イーリッヒ家はディセンバー卿やバリエ卿と同じく、神アトレイクの加護を持つ家系なのかもしれない。
しかし、確証があるわけではなかった。
別の大陸の者であるということは、否定材料にはならない。神アトレイクの神力を使った転移術であれば、大陸間の移動は可能であることを身を持って経験している。
しかし、ただそれだけで、別の世界から転生などをさせるものだろうか?
ただの偶然とも考えられるが、何か神アトレイクの意図があると思った方が良い気がした。
「その聖剣には、どのような力があったかは知っているのか?」
「いろいろと書かれていた気はするが、非現実過ぎてまゆつばものでしかないと思うね。」
「例えば?」
「所持した者の力を神力に変換するとか、それに乗って空を飛べるとか···馬鹿馬鹿しい幻想ばかりだったと思う。」
確かに、元の世界での常識で考えれば、クリスの言う通りかもしれない。
しかし、その聖剣が実在していた可能性がないとは言い切れなかった。
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