第3章 絆 「出立⑱」
転移で王都に戻り、商業ギルドに報告を入れた。
すでに万屋ギルドには同様の説明を終えている。
「そうですか···。」
「彼らが無事である可能性もあります。そうであれば、時間はかかるかもしれませんが、また戻ってくるのではないかと思われます。」
相変わらずアブラギッシュなオイリーに、差し支えのないような説明をしておいた。
詳細までは話していないが、シャーリャウには人の気配はなく、争ったような跡や血痕は見つかったが、無事に避難している可能性があるとだけ告げている。
因みに、転移術を使って訪れたことは話していない。万屋ギルドからの報告で、間違いなく俺があちらに現れたことは、そのうち耳にすることになるだろう。
「移動手段については、国家機密なので詮索はしないで欲しい。」と伝えたところ、さらに大量の脂汗を出していたので、怖くて変な勘繰りはしないと思えた。
「タイガは、この国の要人なのか?」
俺の肩にいるアヤがそんなことを聞いてきた。
今は妖精のような姿をしている。
羽こそないが、掌くらいの大きさになって、ちょこんと俺の肩に座っている様はファンタジーそのものと言える。
「違う。四方の守護者に連れられて、この国まで来た。悪魔との戦いに協力したから、少し融通がきくという感じだ。」
「そうか。ところで、王都には精霊魔法士はいないのか?」
「滞在中に聞いたのは、シャーリャウから出稼ぎに来ていた3人のことだけだな。他は知らないが、王城内にはいないはずだ。」
「精霊魔法士には、今の私を知覚する者もいる。不要な争いは避けたいから、そのつもりでいて欲しい。」
「わかった。その気配があったら教えてくれ。」
アヤの姿は普通の者には見えないようだ。
それは俺も同様で、竜孔流の力を目に流すことで、存在を視界にとらえることができている。
精霊とは、妖精などと同様に、自ら姿を現さない限り目にすることはできない。ただし、その力を使う時だけは、全身に霊素が流れるために顕現するのだそうだ。
幻想的な存在と言えばそうだが、悪魔やら竜などを目にしている俺にとっては、今さらのことだと言えた。
「アヤは高速で馬車を走らせたりはできないよな?」
「私は森と同調してしか、力を行使できない。」
ですよね。
アヤとの出会いは無駄ではないが、当初の目的である移動手段の確保には至っていない。
やはり、普通の馬車による移動を行うしかないか···。
そんなことを思いながら、王城へと足を向けるのだった。
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