第3章 絆 「出立⑯」
竜孔流を放出し始めてから、それほどの時間経過はなかったが、そいつはすぐにその姿を現し出した。
俺自身に面識はないが、グルルの記憶がはっきりと何であるかを示している。
外観は体長5メートルほどの四つ足で立つ竜。
それが空間に浮かび上がり、やがてはっきりとした姿を見せていく。
深緑の鱗が存在を主張し、実際の大きさ以上に錯覚させる役割を果たしていた。
冷たく光る目は、カナリーイエローと呼ばれる宝石のようなビビッドな色彩を持ち、こちらをじっと見つめている。
「初めまして、だな。」
「···貴様、何者だ?」
目の前にいる竜が発声したのではない。頭に直接呼びかけるような念話のようなものだろう。困惑、疑念といった響きを感じるが、敵愾心のようなものは含まれていない。
「何者かわからないか?」
頭をもたげるような仕草をしながら、目の前の竜は俺をつぶさに観察している。
「懐かしさを感じる···だが、私はおまえを知らない。」
「初見だからな。俺も似たような感情を持っている。」
「その力は···何だ?」
「先代から継承した。」
その言葉に、竜は一瞬だが悲しみのような光をその目に宿した。
「そうか···やはり···。」
「タイガだ。アイアタルと呼べば良いか?」
「···その名は嫌いだ。グルルは私をアヤと呼んでいた。」
アイアタルは、別名でアヤタルと呼ばれている。アヤはその愛称なのかもしれない。
「では、アヤと呼んでも?」
「···好きにしろ。」
そう言うと、アヤは瞬時に変身した。
淡い緑の肌を持つ女性。
それが彼女の本当の姿であることを、俺はグルルの知識で知っている。
人の姿をしてはいるが、彼女は人間ではない。
一説によれば、森の悪魔や精霊とも呼ばれ、邪悪な存在とされている。
人々の前では先ほどの竜の姿で現れ、人間に病気をもたらすと言われていた。
「私を探しに来たのか?」
探るような瞳でこちらを見ているが、不快な感じではない。
「偶然だ。知識や記憶としては、継承したものの中にあった。だから、すぐにそこにいることがわかった。」
アヤは簡易な封印を施されていた。
空間に存在する複数の魔方陣のようなものは、その封印のためのものだ。俺がシアルを流すことでそれを解除したのだった。
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