第3章 絆 「出立⑮」
村が見えた。
外周を囲うような柵はなく、木々が比較的少ない森に一本だけ通された道の先に、集落と言っても良いような規模で存在した。
中央に広場があり、それを囲うように家屋が建っているが、人の気配は感じられない。
中央に近づくにつれて家屋の損壊がひどくなり、血痕とおぼしいものが見受けられるようになった。
しかし、そこにたどり着くまでに、魔物のものらしき足跡は見受けられない。
広場には戦闘が行われたとも思えるような地面の乱れがあり、これまで以上に血痕らしき物の数も多かった。
そして、広場の真ん中の地面は大きく抉れており、その周りには何か大きな魔物が踏み荒らしたかのような跡が残っていた。
何かの気配を感じることはない。
鳥のさえずりや、虫の動く音さえ感じられない静寂。異様とも言える空間だけがそこには広がっていた。
ふと、記憶から浮かび上がるものがあった。
グルルから継承したものの一つ。
俺はその浮かび上がった知識に従い、大きく抉れた地面を注視した。
わずかだが、魔方陣のようなものが断片的に配置されていることがわかった。
それは明確に描かれたものではなく、空間に刻まれたかのように存在する。
知識に従い、手に竜孔流を集めて放出すると、それは配置された複数の魔方陣らしきものに流れていく。
自らの行動に疑問はない。
グルルから継承されたものが、無意識に次の行動へと誘うのだ。
そして、その行動の結果は、漠然とした形ではあるが、頭の中で想定することができていた。
グルルの知識が、シアルとは霊素であることを告げている。
この世界では、すべての生物や物質に魔力が存在する。
だが、その理に反する唯一無二の存在がグルルであり、魔力の代わりに有するのが霊素であった。
霊素は元の世界でも存在が認められていた原子番号0番を持つ元素である。第0族元素である霊性元素の一つで、2002年に発見をされているが、物質や科学的性質は謎のベールに包まれていると言ってもよかった。
四方の守護者がそれぞれに木・火・金・水の元素属性にあるように、グルルもまた土の元素属性を持つ。
しかし、土の属性とは他の4属性すべての特徴を兼ね備え、その性質ゆえに調和を保つとされている。
それが魔力ではなく霊力であり、その構成が霊素だということなのである。
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