108話 死闘⑪
良い香りがした。
目を開けるとピンクのふわふわな髪がそばにあった。夢か現実かわからないまま無意識にその髪を撫でていた。
「タ···タイガ!?」
ピクッと驚いたリルがこちらを向いて名前を呼んでくれた。
「···あれ?リル···一瞬女神様かと思ったぞ。」
とたんに赤く頬を染めて目を見開いたリルは少し涙目な気がした。
「···ばか。」
あ~、かわいすぎて抱きしめてしまいそう。
「大丈夫よっ!生きてる!!」
リルが後ろを向いて声を出した。
ん?
「タイガ!気がついたの!?」
ん、あれ?パティもいる。いや、シスやテス、フェリもいた。
「···みんな、どうしたんだ?」
自分が先ほどまで何をしていたのかわからなくなってしまった。なぜ、みんながここにいるんだ?
「タイガが行方不明だから探しに来たのよ。」
いつもの感じに戻ったリルが説明をしてくれた。
俺はゆっくりと立ち上がり、すでに火が消えた穴に向かった。
「タイガ···何を?」
土を穴に戻す。
他のみんなは俺の行動を不可解に見ていたが、やがて近寄ってきて手伝い始めた。
「一体何があったの?」
涙で顔をくしゃくしゃにしていたフェリが俺を補助するように寄り添って聞いてきた。
「···詳しい話はギルドに戻ってからするよ。心配をかけてごめんな。」
しばらくじっとタイガの顔を見ていたフェリはやがて、
「···うん。」
とだけ答えた。
帰りの馬車の中で俺はずっと眠っていた。
出血の影響で体が休息を欲していたのだ。みんなが迎えに来てくれたことで気持ちが緩み、ようやく深い眠りにつけた。
そんな状態だったので、ギルドに着くまでの間にみんなが交代で膝枕をしてくれたり、顔を拭いてくれていたことは知るよしもない。
「タイガの状態はどうなんだ?」
執務室でアッシュは報告を受けていた。
「治療院で見てもらったけど、体中に裂傷がかなりあるみたい。ほとんど癒合しているし、命に別状はないみたいだけど出血が多いから当分は安静が必要よ。」
「タイガに回復魔法が効けば···。」
リルの説明にパティが悔しそうにつぶやく。
「そうか。今は回復を待つしかないな。」
「さっき職員の人に聞いてきた。タイガの認定証には3体の魔族を討伐した記録があったって····。」
フェリがそう言うと、室内には驚きの声が上がる。
「相変わらずめちゃくちゃだな。」
アッシュは苦笑いを浮かべていた。




