第3章 絆 「出立⑫」
シャーリャウに最も近い街の近辺に、それなりに広大な平原が存在した。
そこに転移を行い、街へと向かう。
この辺りからシャーリャウへは馬車で1日半といった距離だが、地図にも載っていない村への乗り合いなどは期待できないだろう。
定期的に物資を供給していた行商人が魔物の襲撃に関して証言をしているというが、その者に接触するのが最も効率的だと考えられた。
商業ギルドの長であるオイリーは、今回の調査に関して全面的に協力をしたいと言っている。
現地での案内役を探してみるので、まずは今から向かう街の万屋ギルドを訪ねて欲しいとのことだった。
万屋ギルドとは冒険者ギルドよりも依頼の幅が広く、ゴミの収集からメイドの派遣などといったあらゆるニーズに対応した商業ギルドの関連組織だそうだ。
規模は小さいが一般家庭からの依頼が多く、この国の地方都市ではそれなりに繁盛しているという。
冒険者ギルドが存在しない街が多いので、その代替えとして機能しているとのことだが、元の世界で言えば派遣や請負業のような業態との印象が強い。
ただ、俺は転移を使ってこちらに来た。オイリーが考えるほどの時間経過はない。連絡は通信によって行われているだろうが、そう都合良く適任者がいるとも思えなかった。
街へと到着した。
辺境の地方都市とは言え、人口は1万人は下らない程度の規模はありそうだった。
すぐに通りがかった人に万屋ギルドの場所を聞き、そちらへと向かう。
メインストリートらしき通りを歩く限り、それなりに活気があって人通りも多い。
しかし、武装した衛兵や冒険者らしき姿も多く、シャーリャウでの魔物の襲撃に警戒をしている節もある。
街の外周は石壁で囲われているが、高さは3メートル程度で厚みもなく、街に入る時に目にした所、老朽化した部分などは崩れかけているところもありそうだった。
あまり張り詰めた空気もなく、シャーリャウの出来事に関しては対岸の火事程度に考えているのかもしれない。
状況を見る限り、それほど重要な情報を得られるとは思わなかった。
目当ての行商人との接触と、シャーリャウの詳細位置がわかれば御の字というところだろう。
軽い聞き込みと食事を兼ねて、出店で串焼きを買いながら食べ歩く。
固くてあまり美味しくはない。
何の肉かはわからないが、脂身がほとんどなくパサパサしている。
臭みはないが、ジューシーさの欠片もないので、噛みくだして一緒に買ったお茶らしきもので早々に胃の中に流してしまう。
ただの栄養補給。
そう思って割り切ることにした。
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