第3章 絆 「出立⑪」
シャーリャウという村は、商業ギルドが保持している地図にも載っていない小さな村らしい。
王都よりも北東の辺境の地にあるが、地図の精度をそのまま信用する訳にもいかず、実際にどの程度の距離にあるかも、縮尺がわからないために予測がつかなかった。
オイリーに許可をもらい、地図を模写する。
位置関係がわかる程度のアバウトなものではあるが、これを基にして転移が可能かの裏付けを取るつもりだった。
こういった事で頼れる人間をと考えると、適任なのは1人しかいない。
俺はすぐに彼のもとに向かい、事情を説明するのだった。
「いろんなことに首を突っ込むものだな。」
執務机で書類と格闘をしていたスティンベラーは、俺の話を聞いて呆れ顔だ。
「たまたまだ。トラブルメーカーのように思われるのは心外だな。」
「悪い意味で言った訳じゃない。嗅覚の鋭さに舌を巻いている。」
言葉ではそう言うが、彼が多忙なのは理解をしていた。これ以上、仕事を増やすなというのが本音だろう。
「シャーリャウには1人で行く。ある程度正確な距離と、わかる範囲での情報をもらえれば良い。」
「ふむ···まあ、精霊魔法士は貴重だからな。わかった、すぐに調べさせよう。」
これだから頭の回転が速い相手は楽で良い。
精霊魔法士がいなくなった場合の経済的損失と、辺境での異変の可能性を考えたのだろう。スティンベラーの動きは迅速だった。
暗部にとって、国の安寧に関わる可能性が考えられるなら、逡巡などはしていられない。
しかも、今回は手駒を使う必要はないのだ。
俺への信用が一定以上であるなら、情報を与えて丸投げをするだけで、それなりの成果を期待することができるはずだ。
悪魔との闘いで後処理に追われている現状を考えれば、彼らにとっても願ったり叶ったりということになるのだった。
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