第3章 絆 「出立⑩」
全員が行方不明であると聞いて興味が湧いた。
余計なことに首を突っ込むなと言われそうだが、精霊魔法士は稀有な能力だと言われている。
スレイヤーとして活動していた間に何人かの精霊魔法士と知り合う機会に恵まれたが、本来は各国に10人程度存在すれば良いほどのものらしい。
一般的には、精霊と契約を交わし、馬の代わりに搬送や送迎をするといった職業が脚光を浴びている。
専用の馬車···と言うよりも荷車が必要になるが、その移動速度は馬車よりもはるかに速く、大規模な輸送を担う商会などでは引く手あまただそうだ。
ただ、精霊には繊細なものが多く、誰にでもその恩恵を与えないとも言われている。
様々な精霊が存在するが、広く認知をされているものの多くは、精霊魔法士の人間性を選ぶらしい。
あくまで一般論だが、精霊魔法士の適性を持つ者は、純粋な人柄であるとされている···まあ、知人の精霊魔法士には一部変わった奴もいるので、その辺りはどこまで正しいのかはわからない。
ただ、少なからず俺が知る精霊魔法士たちは、全員が人として信頼できる者ばかりだった。
稀有な能力に、善性の人間。
その印象に間違いがないのであれば、何らかの助力をしてみるべきではないかと思われたのだ。
「詳しい話をしてもらえないでしょうか?今なら、何か力になれるかもしれない。」
俺はオイリーに提案をしてみた。
少し驚いた顔をしたオイリーだが、何かを決意したかのように口を引き結んで、ぽつぽつとだが状況の説明を始めた。
「私どもと契約をしている精霊魔法士は3名。全員が明るく働き者で、依頼人からの評判も相当なものでした。それが···」
オイリーの話を要約すると、そのうちの1人が2ヶ月程前に突然失踪したらしい。
契約してから2年強になるが、一度も仕事を休んだことのない真面目な青年だったそうで、商業ギルドとしても内外を問わずに人を使って捜索を行うことにした。
芳しい結果が出ずに1週間が経過した頃、別の精霊魔法士たちが里に戻って失踪した者を探すと告げてきた。3人とも同郷なのだそうだ。
「詳しい内容は話せないが、彼は里にいる可能性が高い。」という言葉から、何か深い事情があると察したオイリーは、直近の予約案件をこなしてくれれば長期休暇を与えると言って配慮した。
「その後···彼らからの連絡が途絶えました。」
「里には誰か人を送ったのですか?」
「いえ、送ろうとはしたのですが、彼らの里は少し前に魔物の襲撃を受けたと他の商人から聞きました。情報筋の行商人からは、村はほぼ壊滅状態ではないかと···。」
「その里の名前は?」
「シャーリャウと言います。辺境にある小さな村だそうです。」
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