107話 死闘⑩
魔族を尋問してわかった。
俺が魔族を倒す度に人間に対する奴等の脅威が高まるという矛盾。
この世界では人間の最大の攻撃術は魔法だ。
身体能力で人間を遥かに上回る魔族を物理的な攻撃で屠ることは非現実的。魔族にとっては危険視する事態といえるのだ。
とは言ってもなぁ···。
俺は今の生活が気に入っている。
それを妨害する奴がいるのならば排除するのみだ。
それに魔法が使えない俺には物理攻撃しか手段がない。
ダメだ。
思考が堂々巡りする。
こういった問題はアッシュに相談をするのが一番良いような気がした。彼の判断で続けても大丈夫だと言われればスレイヤーを続ければ良い。ダメなら···その時に考えよう。
俺は地面に穴を掘った。
魔族2体が入る大きめの穴だ。深さは1mくらいで良かった。
スコップなどは持ち合わせていないので、倒木で代替品を作ることで作業の効率化を図った。
傷口の何ヵ所かが開き、血が流れ出る。衣服は血と土と汗で汚れてドロドロだ。
2時間くらいかけて完成した穴に魔族を放り込み、枯れ木を被せて火を着けた。
ウェルクの所に戻り、こちらも燃えた死体の横に穴を掘り、発見しにくいように埋葬をした。
他の魔族が死体を回収して死因を調査できないように隠匿する。3体の魔族が行方不明となることで不審感を募らせてしまうだろうが、原因の特定を遅らせることくらいはできるはずだ。
再びまだ燃え盛っている現場に戻り、木にもたれかかって瞼を閉じた。他に魔族が現れないことを願う。
疲労で軽い頭痛がする。
火が消沈したら土で埋める作業が残っているが、まだ時間はかかりそうだ。
ゆっくりと眠りについた。
うそ···
タイガを発見したフェリにはその光景が信じられなかった。
衣服は何ヵ所も切り裂かれ、血や土にまみれている。力なく木にもたれかかり、足を投げ出すその姿に何も考えられなくなった。
「タイガっ!」
他のみんなも同じ反応を示す中で、リルだけがタイガの名前を呼んで駆け寄った。
胸に耳をあてて心臓の鼓動を確認する。
「大丈夫よっ!生きてる!!」
その言葉を聞いてフェリの視界がぼやけた。
子供の頃以来だろうか、声を出して泣きじゃくってしまっていた。




