第3章 絆 「マルガレーテ③」
国王からの慰留を聞いていたマルガレーテは、普段は見せないような笑顔を浮かべた。
「陛下は私の幼少期に受けた仕打ちをご存知かと思います。」
「···知っておる。」
「では、こうは思われませんか?マルガレーテ・キャロラインは、幼少期に父親に家を追放され、そのまま帰らぬ人になったと。」
尋常ならざる力を宿したマルガレーテに危険を感じたキャロライン卿は、年端もいかぬ彼女を忌み子として野に放ったという。
その話を聞いた国王は、多少の情の揺らぎはあったが、王族や貴族とはそういった側面もあるものだと流していた。
しかし、当人にしてみれば、その仕打ちはあまりにも酷い行いだと言える。
これまでのマルガレーテを顧みると、その時の影響で人間性に歪みができていたとも考えられる。
だが、最近のマルガレーテは表情も豊かになり、部下に対する労いの態度も出てきているという。
「···そなたを変えたのは、やはりタイガ殿か?」
「はい。彼は私のことを、1人の人間として扱ってくれました。」
マルガレーテにとって、これまでに関わった人間は、自分のことを腫れ物でも触るかのような扱いをする者ばかりであった。
それは目の前にいる国王とて、同じようなものと言えた。
黒虎スワルトゥルの加護を持ち、並外れた能力を持つが故の孤独。
結局、誰もが自分が持つ能力にしか目がいっていなかったのだ。
だが、タイガだけは違った。
彼は先入観にとらわれず、自然体で接してくれた。その結果として、自分の望む生き方が見出だせたと言える。
「···そうか。それならば、余も決断をしなければならぬな。」
「決断···ですか?」
「タイガ殿がいなければ、国は滅んでいたかもしれぬ。個々の力に頼るのではなく、総体的な国力の引き上げが必要だと思い知らされた。今回が良い機会だと思わなければならぬな。」
国王は、マルガレーテの離脱が自身の背中を押す最後の機会だと感じた。
何か特定の力に頼るだけでは、これから先の繁栄は成し遂げないであろう。
完全な平和が訪れたわけではない。
マルガレーテという稀有な才能を手放してしまうことにもなる。
しかし、今後のことを思えば、それが必ずしも損失だと思う必要もないのであった。
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