第3章 絆 「悪魔掃討作戦⑬」
マーキングストーンは、そのすべてが砕け散っていた。
レーテのバックドラフトが第二陣を蹂躙した際には、まだ無傷だったように思う。
今となっては無用の長物というものだが、これで悪魔たちが再び現れないというものでもない。
マルガレーテと合流をしてから、その後の経緯を共有した。
「そうですか。デーモンロード···その個体が、現在の悪魔たちを率いていたということだったのですね。」
「自称の可能性もなくはないがな。」
「それはおそらく大丈夫でしょう。こちら側にいた悪魔も、『ジャミス様が王都をどうの···』と喚いていましたから。」
正確には、全滅する直前に自分たちが囮であることを告げて、王都の危機を嘲笑っていた個体がいたらしい。死に際の捨てゼリフのようなものだろう。
「まだ残党がいると思うか?」
「どうでしょうか。第三陣では、大型の魔物と数名の悪魔が現れただけでした。可能性で言えば、若干名にすぎないかと思われますが。」
第三陣で現れた大型の魔物が、マーキングストーンを砕いたようだ。
こちらの状況が見えていたのかはわからないが、自ら縮地先の指標を破壊させたのだとしたら、大した戦力は残っていない気がした。
「しばらくは状況を見守るしかなさそうだな。首領格を失ったとは言っても、同じような存在が出てこないとは限らないしな。」
普通に考えれば、闇夜の宝珠を取り込んで悪魔王となるためには、それなりの力を有していなければならないはずだ。しかし、ジャミスと同格の悪魔が他にもいないとは言い切れなかった。
だが、これで1つの区切りがついたのは間違いないだろう。
悪魔側にとって、今回の侵攻は大敗という結果に終わっている。再度戦力を整え、攻め入ることは容易なことではないはずだった。
ジャミスの侵入で補修が必要になった部屋からは移っていた。
同じ宿屋の違うフロア。
真っ暗な天井を見ながら、ソルは思った。
タイガやファフと過ごす時間は、何物にも変えがたい安心をくれる。
悪魔として造られ、これまで過ごした日々は地獄だった。
求められる成果を出せず、いつ廃棄されるかもしれないという恐怖を感じる日々。
タイガとの出会いで、正しい選択ができて良かったと思う。
彼は優しいが、敵だと見なすと容赦がない。
それに、初見でどうあがいても敵わないと思い知らされた。
本当は、ずっと機をうかがっていた。
ホムンクルスが人間たちへの陽動のために造られたというのは本当だ。
でも、一つだけ嘘をついた。
それは、適性を持つ個体を輩出することも目的だったということ。
悪魔にとって、自分は太陽の適性を持つ器だった。
闇夜の宝珠を取り込める唯一の素体。
邪気が弱く、人間としての性質が色濃く出た自分は常に虐げられてきたが、闇夜の宝珠を取り込むことができれば、その辛い日々から脱することができると感じていた。
だから、そういった思惑を悟られないように、タイガの庇護下に入ることにした。
予想外だったのは、魂の盟約という楔を付けられたこと。
闇夜の宝珠を取り込めたとして、あの楔はその時に自分の命を奪ってしまっていただろう。
でも、そんなことはどうでも良かった。
タイガが僕に竜孔流という力を流し込んだ時は苦しかった。
もしかしたら、僕の嘘を見抜いていて、罰を与えようとしたのかと思えて怖かった。
でも、タイガやファフは僕のことを本気で守ってくれたのだと、今ならはっきりとわかる。
悪魔王になりたかったわけじゃない。
ただ、穏やかに生きていくことだけが望みだった···。
僕が行方不明になったことで、ジャミスが自ら闇夜の宝珠を取り込もうと動いたことが、状況を加速させた。
適性がないから無理なことなのに、自尊心が強く、権威欲に飲み込まれたことで、悪魔たちを崩壊に導いてしまった。
結果的には、一番良い着地となったように思う···。
ソルはタイガとファフの顔を思い浮かべながら、声には出さずに唇だけで言葉をつむいだ。
"居場所をくれて、ありがとう。"
自然と穏やかな笑顔になっていた。
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