第3章 絆 「悪魔王⑯」
習慣のように、他人に身構えていた自分を抑え込み、彼との対話を望んだ。
演技といって良いかはわからないが、年相応の接し方を心がけようと無理もしてみた。
そんな自分を見た彼の第一声は、「誰?」などという予想外の言葉だった。
違う自分を演じようとしたのに、見透かされているようで、自身がただの道化に過ぎないのではないかと滑稽に思えた。
でも···
彼は自然体だった。
感じたことを率直に言葉として出す。
自分が最も苦手としていることを、容易くやってくれる。
戦い方はトリッキーで、物事に対する思考も思慮深いと言えるのに、普段の顔はどこか抜けていた。
ただの変人なのか、気持ちの切り替えが上手いのかはわからないが、羨ましい性格をしている。
何度か会話を交わし、彼の行動を見るうちに、何となくだが彼の強さの秘密を垣間見た気がした。
彼は表面上ではわからないが、ひどく慎重な人間だった。
臆病なのではない。
自身の力に溺れずに、常に様々な手法を考え、いざという時に最適な判断を下せるように常日頃から準備をしている。
魔力がないために、魔法が効かない。重傷を負っても、回復魔法で治癒ができない。
確かにそれはあるだろう。
でも、それ以上に、先を見て行動をしていた。
ドレインセルク公爵家の2人、オヴィンニク、そしてファフといった者たちを鍛え、自力で耐えうる防衛手段をこの国に残そうとする。
なぜ?
何かの策略なのか、そういった性分なのか···。
答えは簡単だった。
彼は他人を守りたいのだ。
人が好きなのだ。
ただ、それだけのために尽力する。
そして、守りたいものがあるからこそ、何者にも屈しない強さを持っているのだ。
気づかないうちに、私はタイガ・シオタという人物から目を離せなくなった。
最初は、母からの言葉の影響もあったかもしれない。
自分と肩を並べられる強者と共に戦いたい。
そんな気持ちを抱いていたのは、間違いではない気がする。
今は···
「光栄です。全力で支えます。」
自分もこの人のようになりたいと感じている。
そして、常に傍らに立ち、たまに見せる人懐っこい笑顔を向けて欲しいと、強く願うようになっていた。
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