第3章 絆 「悪魔王⑪」
弾頭が完成した。
試射での効果検証のために、前部の魔晶石粉の配合率は3パターン。後部との境界に入れた空洞は5パターンで作製することとなった。
それぞれの組合せごとに、コーティングの上から記号を入れて分別。混在しないように、木箱に入れて管理するようにした。
それらを持ってドワーフ兄弟の工房に戻った俺は、あらかじめ作っておいてもらった筒に魔石粉などをセットして、試射用の薬莢を作製する。
火力に結びつく火属性の魔石粉の配合については、すでにSGー01やAMRー01で熟知していたため、それほど労せずに完成へと至る。
弾薬については、あとは試射を行い、正式な弾頭の決定と火力の調整を行う段階となった。
「ゴーレムを操れるかだって?」
「ええ、ちょっとした実験に必要なのですが···。」
王城に出向き、スティンベラーに試射用のゴーレムを出してもらおうかと思っていたのだが、ここで問題が発生した。
「いや···申し訳ないが、私には無理だ。宮廷内に何名か適性のあるものはいるだろうが、何の実験を行うつもりなのかな?」
扱うモノがモノだけに、信頼のおける者にと思っていたのだが、スティンベラーはゴーレムを操れないらしい。
「いや、大丈夫です。皆さん、お忙しいでしょうから···。」
「そうか···いや、私もそれなりに忙しい身ではあるぞ。」
何やら、自分だけが暇人扱いされていると思ったスティンベラーがヘタなツッコミを入れてきたが、とりあえず適当にあしらっておく。
戦争の道具として取り上げられないように、人は選ばなければならない。
スティンベラーは、この国の暗部に属しているが、だからこそ信頼がおけたりもする。そういった立場にいる良識人は、俺が作ろうとしている武器がどれだけ恐ろしいものであるかをすぐに把握するからだ。
これは対悪魔用の化け物と言って良い。
万一、対人戦で用いようとすれば、この大陸の勢力図が変わるものであると認識し、その技術を広めてはいけないと考えられる者でなければならない。
宮廷内にも、そういった者達はいるのではあるだろうが、彼らもまた上層部から追求された場合は、黙秘を貫くことができない立場にある。
そういった意味も含めて、様々な側面から口の固いスティンベラーが適任ではあったのだが···。
仕方がない。
あまり借りを作りたくはないが、彼女にお願いすることにした。
「え?」
「少し、君の時間を俺のために割いて欲しい。ダメかな?」
マルガレーテは、驚いた表情で俺を見ていた。
「いえ···大丈夫です。」
「そうか、ありがとう。」
俺は可能な限り、イケメンスマイルになるように笑いかけた。
イケメンじゃないから、よくわからないが、とりあえず余計なことを言わずにニコニコしておいたら、マルガレーテがうれしそうに笑い返してくれたので、間違いではないのだろう。
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