第3章 絆 「悪魔王⑩」
魔晶石の粉と鉛を混合させたものを金型に入れて冷やす。
弾頭となる部分の製作のために、ドワーフ兄弟は30センチ四方の金型板を相当数用意してくれた。
これで短時間でも量産がきく。
だが、この弾頭だけでは完成というわけにはいかない。
冷えて硬度を持った状態のものを、別の金型に入れて鉛を注ぎ込む。
魔晶石粉が配合された弾頭は、あくまで魔法障壁を破るためのものである。
この状態で撃ち込んでも、悪魔の上半身を吹き飛ばすようなストッピングパワーは期待できない。
ストッピングパワーとは、拳銃などの小火器から発射された銃弾が、対象にどの程度のダメージを与えるかの指標である。
今の過程では、あくまで魔法障壁を破るだけのものでしかない。
構造としては、二層式。
前部の魔晶石粉入り鉛が魔法障壁を破壊。ついで、後部の鉛が悪魔の上半身を破壊する。
銃弾に鉛を使用するのには理由がある。
製作面で言えば、鉛は安価で融点が低いために加工がしやすい。そして、比重が重いために、質量による慣性力が高く、空気抵抗にも強いのだ。
そして、対悪魔用としては特に重要なことなのだが、鉛の柔らかさが強力な破壊力を生む。
単純に考えると、弾頭は硬い方が破壊力が高そうに思えるかもしれないが、硬度の高い金属を使用した弾頭は、貫通力が高くなり今回の用途にはそぐわない。
柔らかい鉛であれば、対象に着弾した瞬間に弾頭は潰れ、より大きなダメージを相手に与えることが可能となる。
核が弱点となる悪魔ではあるが、個体によってその場所が異なるのでは、貫通力よりも破壊力に特化した後者の方が適しているのは言うまでもない。
唯一、不安要素として考えられるのは、魔法障壁への着弾後の挙動についてだが、これは前後部の境目に適切な空洞をつくることで、極端なブレが発生しないように備えている。
この辺りの構造については、重火器類の特殊弾の特徴を取り入れているのだが、その効果については銃の完成後に試射で検証をする必要がありそうだ。
因みに、二層式弾頭のコーティングについては、魔道具の作製で用いられる防魔素剤というものが存在していたので、それを流用している。
何にしても、こういった知識を持つドワーフ兄弟と巡り会えたのは、幸運だったと言うしかないだろう。
余談だが、なぜ俺が彼らのことを名前ではなく、ドワーフ兄弟と呼ぶのかについてだが···関西弁では口にできないような意味合いの名前だったとだけ伝えておこう。レベル的には現行犯逮捕クラスなやつだ。
一応、彼らの名誉のために言っておくが、この世界では多くはないが、名前としては然程おかしくはないものだそうだ。
公序良俗に適した配慮だと考えて欲しい。
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