第3章 絆 「悪魔王⑨」
ガンっ!
ガンっ!!
ガンっ!!!
ガキャッ!!!!
新しい武器を製作してもらう段取りはついた。
ついたのだが···
「失念していた···魔晶石は魔素が強すぎるから、俺以外に加工できる奴がいないじゃないか···。」
今回の武器は、対悪魔用だ。
火力が強いのは必須だが、それだけでは悪魔の魔法障壁を撃ち破れない。
だから魔晶石を用いて、魔法障壁ごと奴等の上半身を吹っ飛ばせるものを考えた。
しかし、依頼したドワーフ兄弟の前で魔晶石を取り出した瞬間、彼らは意識を失ってしまった。
「あ~、めんどくせぇ···。」
俺は再び、黄泉の大湖にいた。
魔晶石で他の者が影響を及ぼさない土地となると、ここしか思い浮かばなかったのだ。
ガンっ!
ガンっ!!
ガンっ!!!
ガキャッ!!!!
魔晶石を専用のハンマーで細かく粉砕する。
手法についてはドワーフ兄弟にレクチャーを受け、数時間ほど他の鉱石で練習をしたので問題はない。
ガンっ!
ガンっ!!
ガンっ!!!
ガキャッ!!!!
別にこういった作業が嫌いだとか、苦手というわけではないのだが、魔晶石の粉砕は文字通り粉末状になるまで行う必要がある。
単調なのだ。
ガンっ!
ガンっ!!
ガンっ!!!
ガキャッ!!!!
宝石の加工をするわけではないので、大した技術がいるわけでもないし、細心の注意を払うようなものでもない。
ゴリ。
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ。
ある程度細かく砕いた魔晶石を、すり鉢のようなものでさらに細かくしていく。
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ。
知っているか?
関西人は沈黙を嫌う。
なぜかって?
相手から「つまらない人」のレッテルを貼られたくないからだ。
え?
今は1人じゃないかって?
そうだな···。
こちらの世界に来てから、任務で他の誰かを演じるのではなく、素の自分を出せるようになった。
正直なところ、エージェントという立場にいると、どれが本当の自分かわからなくなる事が多かったように思う。
今はそんな訳のわからない心境に立たされることもなくなった。
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ。
誰かと過ごす時間というのは、ものすごく貴重なものなのだと痛感する。
多くの人は、それが当たり前のことだと思うのかも知れない。
だが、俺にとっては新鮮なことなのだと思う。
コポコポコポ。
粉砕作業を終えて、鉛を溶かす作業に移行した。
鉛が溶ける融点は327.5度。
それほど高い温度ではないので、そのまま粉砕した魔晶石粉を適量ずつ投入する。
偏りがないように混ぜ合わせていく。
因みに、魔晶石の溶解温度は推定で2000度程度だそうだ。
一般的な鉱石に比べて、宝石の類いは融点が高い。ダイヤモンドなどは3548度。水晶でも1610度と高水準である。
だからこそ、このように弾丸となる鉛を溶かし、そこに魔晶石粉を混入することも可能だったりする。
普通はやらないような作業だが、これで悪魔の脅威から他の者を守れるのであれば、無意味な時間ではない。
そうだ。
こういった地味な作業も、大きな意味合いを持つのだ。
「···ババ球を量産するよりも、はるかにマシだしな。」
俺は作業に集中するようにした。
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