第3章 絆 「悪魔王⑦」
王都内での調査は、その内容を徹底したものへと変えて、引き続き実施されていた。
騎士団がメインとなり街中を物々しく動き回る姿は、当然のごとく不穏な気配を民に感じさせることとなったのだが、そこはスティンベラーが裏で商業ギルドや自治組織に手を回し、「有事の際の緊急訓練である」との周知を展開していた。
かなり苦しい···いや、ゴリ押し以外の何物でもないなと感じはしたが、直近のスタンピードや悪魔の襲来が、情報として回っていたことが良い方向に傾いたのかもしれない。
大きな混乱が生じることはなく、小さな諍いに関しては、覚醒した竜騎士2名とマルガレーテ、そしてオヴィンニクのメンバーが街中を巡回することで毒気を抜くこととなった。
俺は離れたところから見ていたのだが、マルガレーテやルイーズとビーツ姉弟の人気はかなりのもののようだ。
さすがに本人達に殺到するような事はなかったが、大通りを歩く3名への歓声は凄まじく、近くの店の店員が仕事も忘れて見学に来るほどのものだった。
先の戦いで、この国を救った現代の英雄。
王城の広報担当が公開した内容が、民たちの中に定着した結果と言えるだろう。
「アイドル顔負けだな。」
「アイドル?」
「人気劇団の花形役者みたいなものだ。」
「ああ、なるほど。」
一緒にいたファフからの質問に無難に答えはしたが、この世界にはテレビなどの媒体はない。
各地を回りながら、定期的な催事として行われる劇は存在するので、例えとしてそれで説明を入れておいたのだ。
「劇って、すぐに見れたりするの?」
「いや、今はスタンピードの後だからな。大事をとって、しばらくは未開催らしい。」
「そっか···。」
同じく一緒にいるソルが劇に興味をひかれたようだが、都外の安全が確保できたわけではないので、当面は開催されることはないだろう。
「催事が再開されたら見に行こうか?」
「本当?やった。」
ソルは年相応に聞き分けが良かった。様々な辛い思いをしてきたこともあり、今の環境にいることだけでも幸せだという。
そんな姿を見ていると庇護欲が出てしまいそうになるが、立場を考えればのほほんとした生活を送らせる訳にもいかない。
実は彼女には、竜孔による覚醒施術を日々試みている。
本質的な部分を変えることは難しいが、第3の竜孔であるプニプーラには、邪気を吐出する作用がある。
厳密に言えば、精神の安寧をもたらす部分であり、それが自尊の念を高め、意志を強くさせる作用をもたらすのだ。
これは、他の悪魔の邪気にさらされた場合の耐性を備えるために、重要なものではないかと考えていた。
もちろん、ソルには竜孔が存在する訳ではない。
しかし、竜孔のある場所は、人間種にとって気や力が出入りする点と同じ位置に存在をしている。
俺の竜孔流を考えもなしに流し込めば、それがソルの核にどう影響してしまうのかがわからないという不安要素はあるが、同じ人型である以上、鍛えられるところや覚醒させられるものは試してみようという判断に至ったのだ。
結果としては、思惑が当たったと言えるだろう。
ソルの邪気は日々小さく、そして安定を欠くことのないものへと変化していっている。
これは単に悪魔としての本質が弱体化したのではなく、ソルの精神が強くなり、自我が抑え込むことに成功しているという解釈につながっていた。
鍛練は地味で苦しみを伴うものではあるが、本人が人間として生きたいという希望によって尽力をしているのだから、効果が出てきていることは喜ばしいことだと言えるのだった。
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