第3章 絆 「悪魔王⑥」
調査の結果、王城を含む王都内からは、マーキングストーンの類いは発見されなかったらしい。
ホムンクルスについても同様だ。
スティンベラーから共有された情報では、騎士団や宮廷内にいる魔法士、及び治癒士を総動員させて、絨毯爆撃のようにくまなく調査を行ったそうだ。
ホムンクルスについても、本質が悪魔であることから、聖属性魔法士が複数のチームに別れて探知を行ったらしく、王都内に潜伏をしている可能性もほとんどないだろうと断言していた。
しかし、こういった短期間での調査は、気づかないうちに漏れか発生することが定石だったりする。
俺はスティンベラーに、もう一度同様の調査を行って、万全を期すべきだと告げた。
「また同じことをやれと···いや、そうだな。万一があれば、この国だけではなく、世界が脅威にさらされるか···。」
見る度にげっそりとしていくスティンベラーだが、気の毒だとは思わなかった。
これは彼の職務における責務だからだ。
「民家や宿屋の内壁なども調査済みですか?」
「いや、それは···。」
「ホムンクルスの存在ばかりではなく、王都内に入りこんだ人間が、宿泊先や下水道の中にマーキングストーンを設置しているかもしれない。むしろ、視界に入るところになど、ないと思った方が賢明だと思いますが。」
ホムンクルスの代わりに、家族を人質にとられた人間が工作員となっている可能性もある。想定できる事は、虱潰しに調査をさせるべきだろう。
「そう···だな。わかった、もう一度、調査をさせる。」
根回しやら何やらとあるのだろう。
人海戦術は短期間で結果を出しやすいものではあるが、経費もかかる上に、各指揮系統との連携が重要となってくる。
人は集められても意識が低ければ見落としも多く、成果も出にくいものとなるのだから、その辺りの士気高揚のための策も組まなければならない。
しかし、だからと言って、今の段階で悪魔というキーワードを理由に使うと大混乱を招き、収拾がつかなくなってしまう。
気苦労でハゲなきゃ良いが···。
休みなくフル稼働で動く彼らを内心では労いつつ、鞭を打つかのように穴を指摘する。
もし、これが原因でハゲたら···日本の伝統的な髪型を流行させるように裏で動いてやろう。
そう、丁髷を。
あれなら、ハゲかどうかはわからないからな。
顔色の悪いスティンベラーを見ながら、俺はこっそりと不穏なことを考えていた。
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