第3章 絆 「悪魔を支配する者⑩」
「無理だよ···。」
「なぜ?」
悪魔になる必要などはないと言う言葉に、悲痛な表情で否定をする28号。
彼の目には、諦めの色が濃く滲んでいた。
「もし···もし逃げ出せたとしても、僕を受け入れてくれる人たちなんかいない。タイガがさっき言ったみたいに、僕の本質は悪魔なんだ···うまく人の社会に入り込めたとしても、何かの拍子でバレたら···。」
「何かの拍子というのは、具体的にどんなことだ?」
「それは···ケガを負っても治りが異常に早いとか、すぐに死なないとか···いろいろだよ。」
「魔族のように、聖属性魔法士に見破られたりもするのか?」
「うん···たぶん。」
「たぶん?」
「純粋な悪魔とは違って、はっきりとはわからないけど···。」
事例が少ないから、詳細はわからないということだろう。
「それに···人里離れたところで1人で暮らすにしても、どうやって生きていったら良いかわからないし、追っ手が来たら裏切者として処断されてしまうよ。」
そうかもしれない。
だが、別の道もある。
「俺と一緒に来れば良い。」
「···え?」
「条件はあるが、俺は別におまえに何かを要求することはない。」
「···どうして?」
「何がだ?」
「僕は···悪魔として造られたんだよ?そんなのを連れて行くだなんて···。」
「人の中にもいろいろといる。悪人か善人かなんて、普通なら見た目では判断ができない。でも、俺にはそれを見分けるスキルがある。おまえの中にある邪気は消し去ることはできないかもしれないが、ごく小さなものだ。それを大きくさえしなければ、大した問題にはならないと思っている。」
「··································。」
「要は、意識をどう持つかだと思うぞ。」
このままだと、結果を出せずに処断されるか、邪気に支配をされるかのどちらかだろうと推測ができた。俺と一緒に来ても棘の道ではないとは言い切れないが、まだ希望はあるはずだ。
「もし···僕が衝動か何かで、タイガや他の人を傷つけたらどうるの?」
「そのための対策は事前にさせてもらう。」
「追っ手が来たら···。」
「俺が潰す。」
「···なんで、そんなことをしようとしてくれるの?」
「普通の悪魔だと思って、ケツバットをしまくった詫びだ。」
「け、ケツバット?」
「気にするな。」
「···信じて···良いの?」
「おまえが人間として暮らしたいと思うのなら、俺はおまえの味方であり続ける。」
同情がないわけじゃない。
それに、様々なリスクも考慮に入れなければならない。
だが、これは悪魔のことを知るための絶好の機会でもあった。
我ながら、打算的な言い訳をしているとは感じながらも、今後のことに頭を働かせることにした。
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