第3章 絆 「悪魔を支配する者⑤」
バッコーンっ!
俺の会心の一撃が、悪魔にクリティカルヒットした。
フランジメイスを両手で構え、フルスイングで奴の臀部に叩きつける。
いわゆるケツバットである。
ここで必殺の一撃をと考えてはいたのだが、視認した悪魔の風貌が想定外であったこともあり、手心を加えたのだ。
小柄···と言っても、160センチくらいの背丈で細身な体型のため、俺の一撃をケツに受けた悪魔は三日月のように体をそらしながら前方へと吹っ飛んでいった。
「·····································。」
追撃が可能だとは思いながらも、俺はすぐに転移術を行使して悪魔の神殿へと移動した。
「う···うぅ···くそ···鼻が···それに、お尻が···。」
タイガが去った遺跡では、あまりの悪臭とケツバットに翻弄された悪魔が、肉体よりも精神的に大きなダメージを負って涙していた。
「い···行かなきゃ···あいつを倒さなきゃ···。」
何度も倒れそうになりながらも何とか立ち上がった悪魔は、タイガの痕跡を固有スキルで鑑定して行き先をつきとめる。
「···くそ···あれが人間?どう考えても···僕より悪魔じゃないか···。」
悪魔はお尻を擦りつつ、涙ながらにそうつぶやいた。
おかしい···。
転移した先の神殿で、俺は生じた疑念に頭をフル回転させていた。
あの悪魔は、邪気の性質から言って間違いなく悪魔のはずだ。
だが、これまでに見た悪魔とは風貌が違う。
擬態···いや、ここでそんな真似をする必要があるだろうか?
長い耳に整った顔立ち···あの姿は悪魔と言うよりも、まだ成人手前のエルフに似ている。
髪はこれまでに見た悪魔と同様の灰色だったが、瞳は赤ではなく翠。それに、瞳孔も一般的なものだった。
人間種に見せて油断を誘うつもりか?
いや、魔族は擬態をすると、通常よりも総体的な能力劣化に陥ると言われている。悪魔もそうではないのか?
···いくら考えても材料が少ない。
今は考えるよりも、奴の無力化を優先すべきだろう。
奴が悪魔じゃないかもしれないという疑念は危険だ。ソート・ジャッジメントの判断を信じて、次の行動に移るべきだった。
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