100話 死闘③
闘いの場を変えることで先程までのハンディキャップから対等な条件にまでラインを合わせることができた。
目測で約1m30cmのバスタードソードに対して全長が70cm程度の警棒2本。
体格的にも小回りが利く。
木々の間は2~3mしかなく、立ち回りならこちらの方が有利なはずだった。
対峙する魔族の剣術は秀逸としか言いようがない。肘を可動させてコンパクトな振りで斬撃を行う。
より狭い空間では刺突を中心としたコンビネーションで矢継ぎ早に剣を操ってきた。
居合術による一撃必殺の技を修めた俺とは違い、魔族は乱打戦···文字通り剣の打ち合いに長けていた。
刀はその斬れ味を出すために刃が非常に鋭いが、その反面刃こぼれを起こしやすい。日本の戦国時代の乱戦では刃こぼれを起こしてすぐに使えなくならないように刃を鋭く研がなかかったとされているくらいだ。
対して剣は自重と耐久性による攻撃、斬るよりも打つために造られたと言える。
言うなれば斬れ味の刀、頑丈さの剣。
刀と剣による闘いは持久戦となると剣に軍配があがる。
それを考慮しての戦法だったのだが、今回の相手は想定外の剣の腕前を持っていた。
これほど相性の悪い相手はそうもいないだろう。一度闘って手の内を知っているアッシュくらいか。
キィンッ!
ガッ!
ギーンッ!
何度となく警棒とバスタードソードが衝突し、火花と金属音を散らす。
激しい消耗戦の中、余裕があるのは魔族の方で口の端には笑みまで浮かべている。
剣撃を受ける衝撃で俺の傷口は流血したまま、体をさらに赤く染めていく。
警棒がバスタードソードよりも耐久性に優れている訳ではない。まともに打ち合ったらこれも折れ曲がってしまうだろう。
刀による剣術は正面から打ち合うのではなく、相手の剣の腹を叩き軌道を逸らす闘法。合気道と同じく力を利用する静の技である。
警棒の扱い方もそれの応用を取り入れている。
「ふん、よく粘るな。いつまでそれが続くか見定めてやろう。」
時には木を壁として使い、相手の死角に入る。
何度も警棒を振り、攻撃を出しては避ける。
相手のミスを誘発するように小さなフェイントを何度となく入れるが、精神的な優位に立つ相手には通じない。
正直きつい···。
体がきしみ、息があがる。
なぜこいつは平然と剣を振り続けられるのか?
簡単な答えだ。
俺よりも強いからだ。




