第3章 絆 「悪魔を狩る者⑰」
「そんな物で良いのか?」
「ああ。今言った武具を2つ製作して欲しい。」
マルガレーテがアポイントを取ってくた鍛治士と話をすることができた。
俺はすぐにラフで描いたイメージ図を渡し、鍛治士が再び口を開くのを待つ。
「これって、鎚矛だよな?頭部がデカ過ぎる気がするが、バランスが悪くないか?」
「そこは空洞にして、拳大の石を入れる予定だ。全体の寸法についてはプロに任せる。」
「ふん···まあ、柄を長めにしたら重量バランスもそれなりに仕上げることはできるが、その細い体で振り回せるのか?」
こちらの世界では、細い、細身とよく言われるが、別に俺はガリガリくんではない。
元の世界では、「兄ちゃん、ええガタイしとるのぉ。」と言われる部類である。
こちらの戦闘職の男性が総体的にプロレスラー並みの体格をしているため、それと比較されているだけなのだ。
「問題ない。これでも力はあるからな。」
「ま、依頼主がそう言うならかまわん。ただ、あまり重たい鉱石を入れたら、振り回されるのはあんたの方だぞ。この出縁は凶器だからな。」
鍛治士に依頼をしているのは、フランジメイスと言われる形状のもので、打撃用の頭部と柄を組み合わせた、いわゆる合成棍棒である。
頭部には魔晶石を入れて、悪魔や魔族の動きに負荷をかける機能を追加する予定だ。ただ、その構造だと、頭部がやや軽量となってしまうため殺傷力に不安が残る。それを補うために、頭部の外郭には出縁をもった同形の金属片を放射状に組み合わせることにした。
外見で言えば菱形となるこのメイスは、軽量化と衝撃力の集中に長けているため、素人でも扱いやすいのが特徴となる。ただし、強力な魔素を発する魔晶石を組み込むため、実際に使用できる者は俺以外にはいないと言っても良い代物だった。
「取り扱いには十分注意をする。」
「わかった。あと、頭部に石を入れるのなら、耐久性に問題が出ないように何か細工を考えてやる。そうだな···3日ほどしたら、一度様子を身に来い。」
「了解した。期待している。」
この鍛治士は、騎士団の武具を一手に引き受けている工房の主である。
手がけた武具を見る限り、ドワーフのような独自センスはそれほどないように思えた。
ただ、壊れにくく、手入れがしやすいという、製品としての完成度には定評があるらしい。
今回の依頼は、銃火器のような独創的な一点物を期待しているわけではないので、一定水準のものを作ってくれるだけで事足りると言えた。
このメイスが完成すれば、複数の悪魔や魔族に囲まれる状況でも、活路を見出だすのは難しくはなくなるだろう。
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