第3章 絆 「悪魔を狩る者⑯」
「意外だな···。」
「それはこちらのセリフだ。」
悪魔の羅術に対抗するために、竜孔流を身に纏う鍛練を開始した。
因みに、俺が使うものは本来の竜孔流とは異なるものではあるが、グルルの祖が黄竜であるというのであれば、広義ではあながち間違いではないと解釈している。
まあ、名前などは大した役割は果たさないのだから、何の問題もないだろう。
さて鍛練だが、気功と呼ばれる術に、内気功といわれるものがある。
内気功は体内に気を循環させることによって、気の質やコントロールする能力を高めるものだと言えるのだが、これは体表を硬質化させて外部からの攻撃耐性を高めることも可能であった。
この要領を竜孔流に置き換えて実践することから始めてみたのだが、これが予想以上の効果を出すこととなった。
全身に纏った竜孔流は視認することはできない。
しかし、感覚で竜孔流が体表を覆い、障壁として成り立っていることが知覚できたのである。
それが悪魔の羅術をどの程度まで防ぐのかは、実戦で検証していくしかなさそうだったのだが、元々絶大な効果を期待していた訳でもなく、正面から羅術を浴びながら攻撃をするつもりもないので、機会があるごとに効果を試せば良い程度に考えていた。
それよりも、鍛練を見学していたファフが合間に寸勁を教えて欲しいと言ってきたので、基本から忠実に教えることにしたのだが、その飲みこみの早さと上達ぶりには絶句するしかなかった。
当初は気功術のような概念がない世界であるため、その理解を促すのに苦労をさせられたのだが、試しに気の代わりに魔力を使って寸勁を打たせてみると、それが絶大な威力を発揮したのである。
因みに、そのファフの練習相手となった盾士のシンは、盾でファフの寸勁を受けて30メートル以上も吹っ飛ばされていた。
鍛練開始1日目での成果として考えると、末恐ろしい戦闘センスと言って良いだろう。
「こんなに早く修得できるものなのだな。もっと難航するかと思った。」
これが冒頭の「意外だな···。」の理由である。
「本来は体内の気で行うものだから、ファフの寸勁は気功ではなく魔功といったところだな。まあ、効果は同じようなものだから、それで問題はないだろう。」
ファフは気ではなく、魔力で寸勁を実現させた。寸勁は気を外側に放射する外気功と呼ばれるものの一種だ。魔法は魔力に術式を施して行うものだが、身体能力強化が体内に施す内魔功と位置付けられるなら、さしずめ外魔功といったところかもしれなかった。
「これ、使えるな。術式がいらない分、展開が早い。近接戦闘で重宝しそうだ。」
その後、ファフは鍛練を重ね、剣を体の延長と仮定して魔力をこめることにも成功した。
こちらの世界でいう魔法による武器能力強化を術式無しで可能としたもので、これによりファフは近接戦闘のレベルを格段にアップさせることとなったのである。
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