第3章 絆 「悪魔を狩る者⑮」
「そうだ···そう言えば、悪魔の神殿で妙なものを見た。」
「妙なもの?」
「古い壁画があった。そこには、巨大な人···たぶん、悪魔だと思うが、それと対峙する5体の生物が描かれていた。おそらく、そのうちの4体は四方の守護者ではないかと思ったのだが、あれが何かはわかるか?」
「5体目はどのような姿をしていた?」
「蛇のような姿だった。頭部の形から、竜ではないかとも思ったが···グルルは確か獣類の王だったと聞いている。別の何かなのか?」
「それは、おそらく太古の悪魔王との闘いを描いたものだろう。」
「太古の?」
「ああ、我やヴィーヴルよりも以前の世代のものだ。おまえが見た5体目は、その世代のグルルに違いない。」
「黄竜か?」
ヴィーヴルから聞いていたグルルと同じ魂源を持つ竜。それが、四方の守護者を統治して、共に闘っていた時の様子が描かれていたのではないかと思った。
「そうだ。それもヴィーヴルから聞いておるようだな。黄竜は、獣類の王であるグルルの祖だ。」
獣類の王の祖が竜だと···いや、似たような存在が、元の世界のどこぞの伝説にあったように思う。
神も、ところ変われば名前が変わるのと同じかもしれない。
むしろ、世界が異なっても、神々や神獣、神竜の類いは同一のものかもしれないのだ。
そのあたりの概念は、機会があればアトレイクにでも尋ねれば良いだろう。
とりあえず、概要が聞けただけでも、理解が進んだと言える。何らかの理の中で良いように転がされている気が増していくが、エージェント時代に比べれば、自由なものだと思うことにした。
「そう言えば、その悪魔王というのは何だ?」
「悪魔の王だ。」
いや、それは誰でもわかる。
「今も存在するのか?」
「···わからぬ。気配を感じることはないが、何とも言えぬな。」
「強いのか?」
「王だからな。」
「だろうな。」
不確定要素が強すぎるので、その強さについてを聞き取るだけにとどめておいた。
いる可能性があるという考えで、備えをしておいたほうが良さそうだった。
スワルトゥルとの話を終えた俺は、マルガレーテを通じて、腕の良い鍛治士を紹介してもらうことになった。
魔晶石を組み込むための武器を製作してもらうためではあるが、今回は銃器のように秘匿しなければならない技術はいらない。
騎士団や宮廷御用達の腕利きと引き合わせてもらえれば、それで良かった。
「明後日までは急ぎの仕事で時間が取れないそうです。その後でもよろしければ、アポイントを取っておきましょうか?」
マルガレーテからの回答に、すぐに首を縦に振った。
他をあたったところで、そうそう良い鍛治士をみつけられる訳がない。それに、それまでの時間は、やるべきことのために有効活用をするつもりだった。
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