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女勇者の異世界桃色計画  作者: 莉子
1/3

No.0 モノローグ

〜Mes élèves mignons heureux de donner.〜



また始まった…


いつもそれは同じ光景から始まり、そして同じタイミングで終わっていく。


時間帯は夜。電気もつけられない学校のような場所で

アイドルみたいに可愛い沢山の女の子達と一緒に、

机も椅子も置かれていない教室に幽閉されている所から始まる。

窓はカーテンで締め切られ、女の子達が脱出について話している中、

彼女達の服装が下着のみというのも、もしかしたら

この場所のヒントになるのかもしれない。


白い綺麗なレースの下着に身を包んだ彼女達は、

月明かりに照らされていればさぞ美しく思うんだろう。

私も下着姿なんだけどね?


ざっ、と20〜30人は居るだろうか。


そんな中、この学校のような場所には

いくつもの監視カメラが設置してあるようで

それを掻い潜るには、四つん這いになって闇に溶けるようにしながら

階段を下っていき、昇降口から外に出ることが唯一の脱出条件だそうだ。


闇夜に監視カメラを欺くには、低姿勢の方が

映像としては分かりにくくなりそうだ。

暗視性能があまりよくないカメラなら。


この緊迫した空気の中、月もない空に突如

光を灯したヘリコプターが此方にやってくるのが見える。


おそらく、最上階にあるだろうこの部屋を照らそうとでもしているのか

かなり低い位置を飛んでいる。

それを確認するのと同時に、私たちは動いた。

いや、動かざるを得なかった。


教室のドアをスライドさせて、皆、四つん這いになりながら出て

監視カメラが真っ正面に設置してある

すぐ右手の階段をそのままの体勢で早足に降りていく。

この緊迫感は本当に息が詰まる。


外のヘリコプターの光も避けるようにして

必死に下に降りていく。


四つん這いになってることが功を奏している様で

窓枠から入れられる光には照らされず

難なく外に向かっていけている。


下へ降りていけている程、心には安心感が生まれ

先ほどの息苦しさから解放されていく気さえしてくる。


夜の学校というだけで怖く薄気味悪いのに、

こんな異様な緊迫感の中、なぜ私はここから逃げているのだろうか…


そんな事を頭の片隅に思いながら、やっとの想いで階段下へと到着する。

見え始めた昇降口の先に、2人の人影。

ヘリコプターの光がその影を照らしていて逆光になり

顔は見えないが、40代位の細身でダンディーな男と

若い20代の誠実そうな強面の男の様に見える。


いや、2人だけじゃない。

その後ろにはもっと沢山の人の列が幾重にも重なっていた。



「おい!!諦めろ!!**騎士団の者だ!

大人しく捕まれ!!」



狼狽える女の子達。

しかし、その表情はどこか安堵している様にも見えた。


この人達から逃げたかったのではないのだろうか…?


現にこの人達は、私達を捕まえに来ている筈だ。

理由は浮かんで来ないが、ヘリコプターから逃げてる様子からして

そうであると思っていた。

女の子達が早足に”**騎士団”なるの者に保護されて行く中、

私は一歩踏み出してはいけない気がして思わず立ち止まっていた。


何故だか脚が踏み出そうとしてくれないのだ。


自分の意思とは関係なく脚は後ろへと向いていた。

そう、身体はこの先の事を分かっている様に…



「校長。」



何処からともなく低く落ち着いたハスキーボイスが

昇降口内に響く。

それは波紋を作っていくように、私の中で増幅して聞こえてきた。



「折角の晴れ舞台です。

私達教員を代表して…」



今まで何もなかった場所に、人型の影が次々と幾重にも現れる。

それは、どんどん人の色になっていき私の目の前には総勢6人が

マントやコートの裾をはためかせて立っていた。

まるで、私を**騎士団から守るように。


驚きに瞳を一瞬丸めるも、私はこの光景を何処かで知っている。

そんな気がした。だからか、この人達の言葉も表情も

向けられる言葉も…私にはとても安心できた。

警戒した様子を見せる騎士団2人は、今にも攻撃をしてきそうな体勢で

私達を睨みつけている。


後ろでは先ほどの女の子達が嬉しそうに肩から

タオルなどを掛けられて、保護されて行っていた。


でも、今はそんな事は気にならなくって

私はただただ身体に力が熱となって湧いてきていて

**騎士団なんかと私は無縁の人間なのだと、確信を得ていた。



「さあ、校長。お言葉を…」



一番左側にいる40代半ばであろう

コバルトブルー色のモノクルをつけた

少し白髪の混じったグレーの髪をオールバックにしている

とても顔の整った細身ながら筋肉質な男性にそう促される。

服装も何処か日本とはかけ離れていて、

フォギー・ブルーの上品なベストにスラックス、

漆のようにしっとりとした鴉色のコートを靡かせ

深紅のネクタイが何処か色香を誘う。


白い手袋をはめた手で優雅に此方を指し示されれば

嫌でも私が校長なんだとわかった。


でも、そこに驚きは生まれなくって、

ただ、その言葉が当然であるかのように

6人の隙間をぬって前に立った。


不思議と怖い気持ちもなくって、今はただただ

口元から溢れそうになる笑いを心に隠しながら

大きく両手を広げた。

そうしろ、と身体が言うから。


すると、下着だった私の姿は一瞬にして

私を校長といった男性と似たような姿に変わった。

黒羽色のしっとりとした手触りのベストにお揃いのショートパンツ。

それを覆うように自分の背よりも長い真っ黒な毛皮のコートと

深紅の真っ赤なネクタイがヘリコプターの風に大きく波打つ。

ロングブーツは私の脚にぴったりで、少しヒールもあるが

立っていても全然辛くない。



”そりゃあ、当たり前なんだけどさ”



すぅ、と私は息を吸う。



「今回は私の為にお集まり頂きまして誠にありがとうございます。

僕は、葛西咲来かさい さくら。この魔法学校の校長をしています。

あなた方が僕達を嗅ぎ回って居たのはずっと分かっていました。

僕うちの教員達は優秀な物でして、

こうしてあなた方が現れる計画も面白い位に筒抜けでしたよ。


その為に、女子高生監禁計画なんて物まで実行して

あなた方が現れやすいようにもしてあげました。

どうでしたか?なかなか、面白かったでしょう?


残念ですが、ここまで辿り着いたからには生きて返す訳にはいきません。

なかなかに、楽しいゲームでしたが…

ここで終焉とさせて頂けましたら幸いです。


加減が出来ませんので、どうか命にはお気をつけて。


さて、Show timeとさせて頂きましょうか!」



そう私が言い終わるのと同時に騎士団達の方に円を描くように両掌を向ける。

私の両手からキラキラと光る光の粉が現れ風に

巻かれるようにして巻き散っていったと思えば

氷柱の形になり外に居た多くの騎士団達に刺さっていった。

真っ赤な紅が四方に飛び散り、花火のようにも見えとても綺麗だと思った。



”別に私は狂ってる訳じゃない。

今までの中で人なんて沢山殺した。

殺さなければ殺されていた、殺すのは良くないことなんて聞くけど

殺さなければ殺される世界で、どうやって生きろというのか…”



なんて、自分を肯定する言葉が頭の中に鳴り響く。

そして私達は何の躊躇いもなく騎士団の中に飛び込んでいくのだった。





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