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第七話 あっけない結末
俺は駒台に乗った一枚の角を手にして6五に打つ。先輩は一瞬なんだこれはという表情を浮かべたがすぐにこの手の意味を理解したようだ。
「なるほどね。どこに引いても味が悪いな。」
先輩はそう言って7一飛。
これは5二の金との銀の割打ちを避けた手だけど単純に8三角成としたらどうするのだろうか。
間髪入れずの8三角成に7三飛。
8二角打の方が良かったかな そう思っても変えられないので仕方なく同馬ととる。
同桂の一手に以下どうするかと読みを深めていると思いがけない手が飛んできた。
同銀… 俺は静かに6五桂、先輩は何の疑問も抱かぬ様子で6二銀引。そっと駒台からもう一枚の角を盤上に放つ。
「うっ」
先輩が思わず声を漏らす。そう、この局面7九の飛車取りと1一角成を見て相当厳しい。
ピッ
先輩の持ち時間が先に切れたようだ。秒読みが始まる。
先輩は口に手を当てて苦悶の表情で手を盤面を見つめる。
だが、時間は待ってくれない。
俺は10…20と増えていくのを横目で見つめる。25秒を過ぎると
ピッ ピッ ピッ ピーッ
切れそうと思ったのと同時に先輩が「負けました」の言葉と共に頭を下げた。