第六話 振り飛車の捌き
7八飛───
「振り飛車は攻められた筋に飛車を動かせ」という格言をじいちゃんに教えてもらった。振り飛車の常套手段である。
「さすがに引っ掛からないよな」と先輩。
7六歩、同銀、7二飛、6五歩。
もしこれで銀を取ろうものなら2二角成以下飛車を取ってゲームセットになってしまう。
〈参考図〉
7七角成、同飛 ここで先輩の手が止まる。
ここは悩む局面だ。俺も目を閉じて脳内将棋盤を浮かべようとする。ゆっくりした進行を目指すなら先輩が銀取りを受ける必要がある。激しい展開を志向するなら8八角とか…いや、それは9八香と上がっているから効果が薄いか。
パシッ
思っていたよりも早い着手に俺はゆっくり目を開けて盤面を確認する。
3三角打か。
これも8八角と変わらない。ただ、6六角の手を消しているのか。
飛車を縦に引いたら6五銀と出られて収拾のつかない展開になってしまう。
6七金も形が悪い。
俺は消去法で6四歩と銀を取る手を選択。
7七角成、同桂、7六飛、
俺は少し考えて7八歩、こういう場合はしっかり受けておいた方がいい。
この後の展開は後手が6四の歩を回収するか8九飛などと打って攻めに出るか。
先輩が指した手は意外にも7九飛。
これは… 俺の中で一つの変化が浮かんだ。少考の末、出た結論は
「行けるかもしれない。」だった。