第1話 物語の始まりとフラグの始まり
キーン コーン カーン コーン
チャイムの音が鳴る。
始業式も終わり、今日から高校2年。
なんだか実感が湧かない。下級生が入学すればまた変わるのかもしれないが、クラス替えがある、くらいにしか思えない。
タッタッタッ
足音。
後ろを振り返ると、居たのは俊介だった。
「おーい、圭」
「なんだ、俊介か」
「何だってなんだよ。地味に傷付いたぞ」
「は?知らねーよ」
「初日から何キレてんだよ」
「あ?キレてねーよ。」
「いやキレてんだろ。」
俊介とは中学からの付き合いで、一年の夏休みに髪を染めてきたのは今でもしっかりと覚えている。そう、こいつは気でも狂ったのか水色に染めたのだ。学校に来た直後に指導室に連れていかれ、次の日髪の色は黒に戻っていた。
体育館を出る。渡り廊下を通り、2-Cの教室へ。
「お前もしかして同じクラス?」
「ああ、そうだよ。喜べ!」
「嫌に決まってんだろ」
「席近くなら話せんだけどな」
「無理だろ。お前は佐倉俊介で俺は矢凪圭、全然違うだろ」
「そっか。そうだったな。ハハハうっかり忘れてしまっていたよ!」
「なんだそのキャラ」
教室に着く。
もう既にほとんどの生徒は来ているようだった。
「そうだ!お前アレ知ってるか!1-Aだった雅小春って女子!」
「あー!知ってる。可愛くて大人しいけどなんか地味に目立ってた奴」
「そうそう!アイツ同じクラスなんだってよ!俺アイツ苦手なんだよな~」
「そうか?そうでもないと思うけど」
「あ!今来た!アイツ!」
長い黒髪の少女が教室に入ってくる。年齢よりも少しばかり幼く見えるが、顔は整っている。美少女と言っても差し支え無いくらいだ。
「ほら、なんか変なオーラ纏ってないか?」
「気のせいだろ」
ズルッ「「あ」」
ビタンッ!
「……盛大に転んだな」
「プッ」
ギロッ
そんな音が聴こえてきそうなほど鋭い目線をこちらに向けてくる。
「ヒッ」
「いや怯えすぎだろ。笑ったのはお前だろ?」
「い、いや!アレは人殺す目してるって!」
立ち上がり、こちらに向かってスタスタと歩き、近づいてくる。
「うわっ!こっち来た!」
「あーあ。お前死んだな」
ピタッ
「ヒイッ!殺さないでー!」
だが、止まったのは俺の前。椅子に座っている俺が少し見上げる形になる。
「え?俺?」
コクリ
僅かに頬を赤く染め、彼女は頷く。
「ほ、ほ、放課後、た、た、体育館の裏に来て」
それだけ言うと、再び彼女は歩き出し、自分の席へと歩き始めた。
「……」
「……」
「……え?」
「……身代わりになってくれたんだなありがとう!それじゃあ後は頑張れよ!」
「あ、おい!お前も席に戻るんじゃねぇ!」
だがその時、丁度ドアの開く音がする。
「おーい、お前ら席につけー」
「タイミング良すぎかよチクショウ!」
「はーい矢凪うるさーい」
「クソッ……、アイツめ……」
本当にどうすりゃいいんだこれ……。