スタートライン
建物に向かって走ると、すぐに街らしき場所についた。
なぜ街に着いたと言い切らないのかって?
だって目の前には石が高く積み上げられた壁しか見えない!
石碑が建てられてるし壁の向こうが街なんだろうけど…
この壁どこまで続いてるんだよ!
とにかく俺達は壁に沿って歩き入り口を探した。
少し歩くと人が出入りしている開かれた門を見つけた。
門を潜り街に入ると最初に目に飛び込んできたのは、人・人・人…街を行き交う大勢の人々だ!
ソリア村しか知らない俺にはただただ衝撃だった。
それにところ狭しと開かれている露店!
見たことない料理がたくさん並んでいる。
それも全部美味そうだし…
俺ここから先に進めるかな…
など考えていると俺の様子を見て察したエドが、
『馬鹿なことを考えてないで行くぞ!
今日中に登録を済ませるんだろ!』
そう言い俺の背中を押し歩き出した。
待ってろよ…必ず戻ってくるからな…
露店に並ぶ品々にそう誓う俺だった…。
暫く誘惑に負けそうになりながら歩き、道行く人に協会の場所を訪ねてみると、この街の中心にある一番大きな建物らしい。
俺が街の外から目印にした建物だな。
さすがに迷うことなく協会の入り口前までたどり着いた。
中に入ると部屋の左右に長椅子と長机が並べられそこで冒険者らしき人たちが談話している。
壁には何か色々書かれている紙が多数貼り付けられていた。
奥を見ると正面の机に女性が数名座っている。
あそこが受け付けかな?
俺は一番端に座っている、黒髪で眼鏡をかけた、美人だけど、この中では一番地味な女性の方に向かった。
女性は俺に気がついたようで
『ようこそ冒険者協会へ。本日はどのようなご用件でしょうか?私ミーナが承ります。』
ヤバい!この人すごく綺麗だ!
確かに一番地味に見えたけど一番綺麗かも…。
とにかく用件を伝えなきゃ
『お…俺達冒険者になりたくてここに着ました。
も…申し込みはここで良いのでしょうきゃ…。』
噛んだ…噛んじゃったよ俺えええ
後ろからエドの呆れたような溜め息も聞こえてくる…
仕方ないだろ!こんな綺麗なお姉さんなんて村には居なかったし、お前と違って俺はあまり女性と話してこなかったんだからさ!
などと俺が顔を真っ赤にしながら心の中でエドに向かって叫んでいると、受付のお姉さんはクスッと笑い
『はい。こちらで受付てますよ。それではお二人ともこちらにどうぞ。』
と言いながら俺達を別の部屋に案内してくれた。
部屋に入ると、中には見たことのない道具と、その上には大きめの丸い水晶がセットで机の上に置いてあった。
俺達は言われるまま、その机の前にある椅子に腰かけて紙の束を手渡されたのだ。
『今お渡しした紙は、これからお二人が登録する際に、今後どのような方法で冒険者生活を送るのかを決める為の資料となっております。』
そう説明され紙を読んでみると
剣士・・・アーチャー・・・盗賊・・・武道家・・・確かに結構な数の職業があるな。
更に各職業の横にはその職の簡単な説明が書いてある。
個人的には魔物を使役して冒険をする魔物使いとか、お宝探索や魔物の位置が探れたり、冒険に役立ちそうなスキルが多い盗賊とかちょっと憧れるかも…。
他には…スキルとは同じスキルを使用しても各個人で性能は異なります。
個人の得手不得手や筋力や知力の差でも変わってきます。
何よりも自分が使うスキルを良く理解し、何度も使用してスキルと仲良くなりましょう。
みたいな事が書いてある。
前半部分はなんとなく理解できるけど、後半部分のスキルと仲良くって全く意味がわからないな…。
あとは…就いた職業に自分が仮に向いていなくても、日々の努力で必ず使える日がきますので諦めないで下さい…
って最後は精神論かよ!でも確かに自分に向かない職に就いて全く何も覚えれなければ無意味だもんな…
一応職業の向き不向きを自分で簡単に判別できるらしい。
考えるより先に行動する性格の人は、比較的武器を使って攻撃する職に向いてるとか、その逆は魔法を使う職とか…
要するに性格などでわかると言いたいんだろうけど…
この判別方法ちょっと大雑把すぎないか…?
そういえばエドはどうするんだろう?
一緒に来ることすら知らなかったから全く想像がつかない。
確かに村に居た時、俺一人で出来ることも限界があったため、訓練に付き合ってもらたけど…
どうせ聞いても素直に答えないだろうな~…
『なぁ、エドは何にする気なんだ?』
『さぁな。直にわかるさ。それよりお前はもちろん決まっているんだろ?
俺はいつでもかまわないぞ。』
うん…予想通りの返答でした。
そんな俺達のやり取りを聞いていたミーナさんは
『お二人ともお決まりのようですね。
それではお一人ずつこちらの水晶に触れていただけますか。』
そう説明されまずは俺から始めることに。
両手で水晶に触れると、今まで笑顔で説明をしてくれていたミーナさんから笑顔が消え、真っ直ぐ俺の目を見ながら
『これが最終確認となります。
一度選んだ職業は今後二度と変更することができません。よろしいですか?』
俺は無言で頷いた。
『それではご自分の就きたい職を脳裏に思い描いて下さい。
もし難しければ、先程お渡しした紙に記載されている職業説明欄を思い返していただいてもかまいません。それでは…始めます。』
そう言い、目の前の道具の操作を始めた。
水晶が白く光だし、その光が俺の体に移り渡ってくる。
そして全身が光に包まれその光が弾けた。
どうやら俺は冒険者に…そう…剣士になれたようだ。