少年
首都アリッシュブルグから北に少し離れた場所にある
ソリアという名の小さな村で俺は育った。
名前は ジャック どこにでもいる今年12歳の男だ。
特に顔が良いわけでも背が高いわけでもなく、
平凡な子供としか自分を言えない事に我ながら情けなくなるぜ。
ここ数日明日に控えた、
村で一年に一度行われる収穫祭の準備を手伝っているんだけど
飽きた!
とにかく飽きた!
毎日毎日飾り付けや荷物運び!
朝から手伝っていたけどそんなこと楽しいわけがない。
さすがに連日同じような作業ばかりで嫌気がさしてきた。
もう手伝わなくていいんじゃね?
周りを見渡しても
殆ど終わってるように見えるし…
よし…やめた!
俺は頼まれていた飾りつけの道具を建物の影に隠し、
その場を離れようとした時、背後から不意に
『ジャック!仕事がまだ残っているのにどこにいく気だ!』
『!?』
突然の声に動きが止まり
恐る恐る首だけを声の方向に向けようとした。
その一連の動きに、声の主は笑いを堪えられなかったようだ。
『ククク、俺だよ。そろそろ飽きて抜け出すんじゃないかと様子を見にくれば予想通りだったかな。』
『エ…エドかよ…驚かさないでくれ…』
そこには長く伸びた黒い髪を一つに縛った、
見るからに爽やかで整った顔立ちが女性から好かれそうな奴が居た。
こいつは エドワード この村の村長の息子だ。
10歳の時両親が俺を村長に預けて行方不明になってから一緒に育った所謂兄弟みたいなもんだ。
まぁしっかり者で真面目なエドが周りからは兄貴みたいに思われているかな。
『なぁなぁ、いい加減飽きたし少しぐらいサボってもいいだろ?』
『ダメだ!
と言いたいところだが、そろそろ俺たちが手伝えそうな事も無くなってきたようだしな…
だが何をする気だ?』
『ニスムの森に行こう!』『ニスムの森か…だが魔物がでたらどうするつもりだ…?』
この世界には魔物と呼ばれる生き物が生息している。
人とは違う生き物で、
どこから来ているのかも
どうやって誕生してるかもわからない奴等だ。
ただ一つわかっていることと言えば人間を見つけたら襲いかかってくるということ。
個体差はあれど何の訓練も積んでいなければ基本的には大人でも太刀打ちできないらしい。
それでも魔物なんて村周辺に出たって話はきいたことがないのに
『相変わらず心配性だな~。
魔物なんてここ何年も出てないし、
俺たちが行くようになっても出会ったことないじゃないか。
まぁ仮に出ても俺がドーンと退治してやるよ!』
『はいはい。でもまぁ…大丈夫か。』
『そうと決まればサッさと行こう~!』
ニスムの森とは村を出て南に一キロ程行った場所にある大きな森だ。
奥に進むにつれ光が差し込まないほど巨大な木々が並ぶ森だが
普段は奥まで行かなくとも狩りや採取するのに困らない為村人もよく出入りしている。
今更ここに魔物が出るとか誰も考えたりしないのに…
エドの心配性は一生治らないんだろうな
そんなことを考えつつ村を出ようとした俺に
『ジャックまて!魔除けの石碑に触れ祈りを捧げてから行くぞ!』
『はいはい。
マモノサンデテコナイデクダサイネ~。
これでいいんだろ。』
『本当にお前というやつは…』