にわとりの会 みなとみらいへお出かけ5月
二話完結です。一話目を読まなくてもわかるようになっています。
202×年、神奈川県。駅から遠いちょっと不便な住宅地。
とある一戸建てのリビング。大画面のパソコンがあり、その前に親子が座っている。
この親子は、育児サークル「にわとりの会」代表ママとその息子3才。
育児サークルとは、幼稚園や保育園に行っていない(0〜4歳)未就園児の親子が集まり、公園や公共施設の部屋を借りて遊ぶ会です。少子化のせいでなかなか、近所に遊び相手やママの話し相手を見つけられないので、こういった集まりは役所から奨励されているようです。
パソコンの画面はいくつかの領域に分けられていて、中央の領域にはホワイトボードが写っています。その領域を囲むように、10名ほどの親子の画像が写っています。その中には代表ママ親子も写っています。
◇
いつもはこのようにサークル活動が始まるのですが、今日はみなとみらいへおでかけします。
みなとみらいへは、サークルメンバーたちの家から二時間以上かかります。しかも今は大雨。とても外へ出られる天気ではありません。
話は一週間前にさかのぼります。
代表ママがパソコンからデータ―をダウンロードしています。開いているのは「ここいったつもり」というwebサイト。様々な観光地や公園のデータが無料でダウンロードできます。その中から、「みなとみらい」を選択、小さいお子様用 小学生用 カップル用 大人用とあるので、小さいお子様用を選択し、ダウンロードしました。データをパソコンの画面で見ると、みなとみらいが動画で忠実に再現されています。まるで公園にいるかのようです。クリックすると視界が広がり、右へ左へ進めます。小さいお子様用なので、視界が低いです。
代表ママは、にわとりの会専用サイトから、シールと書いてあるフォルダをひらきました。子ども向きの小さなシールのデータです。そのいくつかのシールをctrl+cしました。みなとみらいの画面を開き、あちこちでctrl+v。(貼り付け)そのデータをにわとりの会サイトに保存しました。次に取り出したのは、帽子とメガネが一体化された物が20数個。代表ママは帽子とメガネが一体化された物をかぶります。
「これでよし」
と言った後、サークルメンバーに帽子とメガネが一体化された物を郵送しました。
帽子とメガネが一体化された物は、親一つ子ども一つ、(子どもが複数入会している家はその人数分)届きました。届いたら各家庭で、無線でインターネットに繋がるよう設定します。サークル当日は、この帽子とメガネが一体化された物を使います。
サークルの集合時間となりました。
メンバーは親子ともに帽子とメガネが一体化された物を装着しました。
今日はパソコンの画面は使いません。
メガネから見える画像は立体的で、まるでみなとみらいにいるかのようです。 他のサークルメンバーの声がします。でも姿は見えません。
サークル活動は大体いつも同じ流れで行います。
子どものお名前を呼ぶ→絵本か紙芝居を当番ママが読む→手遊びを当番ママの先導のもと行う→体操→メインの活動→誕生日お祝い→次回予告
でも今日は画面がないので、絵本も手遊びも体操も省略。
メインの活動のシールラリーをします。
一週間前に、代表ママが貼り付けしたシールをみんなで探すゲームです。
子どもたちは帽子とメガネが一体化された物を付け、動き回りながらシールを探します。子どもが動くと景色も変わります。
しばらくするとシールがすべて見つかりました。時間が余ったので自由行動となりました。
子どもにとっては、お友達の声はするけれど、姿は見えない。そんな状況にイライラしてきました。
一人の子どもが、帽子とメガネが一体化された物をはずし、窓の外を見ました。雨が上がって晴れてきました。子どもはママの腕を引っ張りながら
「ママ、雨あがったよ」
その声はサークルメンバーにも聞こえました。
「雨あがった?」
子どもたちは次々と帽子とメガネが一体化された物をはずしました。みんな外へ出かけてしまいました。
やはり本物の公園にはかなわないかな。