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36.四人目のハイエルフの存在は露見する。

 セイナは有言実行だった。アレイシアの元へたどり着くまでの間、逆らうものを殺していった。おとなしく、セイナの言葉に従ったものは生きている。

 アレイシアの元へ、セイナはどんどん進んでいく。

 「あ、あの、どうしても、潰すのでしょうか」

 青ざめた顔をした神官の女性は、歩みを進めるセイナに声をかけた。

 「ええ、邪魔だもの」

 セイナはばっさりといった。

 「……そう、ですか。私たちは邪魔なのですか。こんなに貴方様のために動いていたのに」

 「私のためには何もならないわ。貴方たちが勝手に行動しただけだもの。それは、独りよがりな傲慢な考えよ。私はあがめてくれとも一度も言っていない。それどころか、アレイシアを軟禁までして。アレイシアにちょっかいを出さなければ、私はセイアーツ教を完全に潰そうとは思わなかったわ」

 「……アレイシア様? あの方は自分から……」

 「貴方たちは下っ端だからそう告げられているのでしょうけど、違うわ。あの子は自由を求めて飛び出した。そんなあの子がこんな場所にとどまろうと思うはずがないわ。ましてや、実像と異なるハイエルフをあがめる存在たちの元へとどまるなんてありえないもの。それは、精霊の子もちゃんと証言しているわ」

 「……そう、なのですか。でもどうして、ハイエルフ様がアレイシア様のために……」

 「ああ、あの子は……私の娘だもの」

 「え」

 「貴方たちはあの子をただのエルフと思い込んでいたみたいだけど、あの子は私の娘よ。私は私の娘に手をだすような存在なんていらないもの」

 セイナは軽くそれだけいって、アレイシアの元へと歩いていくのであった。残された神官たちは、アレイシアがセイナの娘であるという事実に驚愕の声を上げるのであった。

 

 そして、セイナは、アレイシアのいる部屋へとたどり着く。




 「ハイエルフ、様!?」

 アレイシアの閉じ込められていた部屋には、異常を感じてもアレイシアを守るんだという思いでその部屋に残っていた神官たちが存在していた。その残っていた存在たちは、中へ入ってきた存在を警戒していたが、入ってきた存在を見た瞬間に驚きに声を上げた。

 驚愕に目を見開いたのは、彼らだけではない。

 綺麗に着飾られ、これからどのようにすればいいかと思い悩んだ顔をしていたアレイシアは、その存在を見た瞬間、そんな不安も吹き飛んだ。

 「お母さん……」

 「アレイシア、お馬鹿な子ね。私が散々外が危険だと教えたのに、それなのにこんなところに捕まって」

 「うぅ、ご、ごめんなさい」

 「謝らなくていいわ。私が貴方に厳しい世界を見せなかったのも原因だろうし。アレイシア。私、セイアーツ教をつぶすわ」

 「えっ」

 「私はね、貴方が捕まって、フランツにも言われたし、娘を放っておくのもどうかと思ってわざわざここまできたの。でも、こんな風に出なきゃいけないのは面倒だわ。元々セイアーツ教は気に食わなかったし、いい機会だもの。徹底的に、潰すわ」

 アレイシアは、そんなセイナの言葉にひきつった顔をしている。この母親がやるといった事を、やり遂げる存在だとアレイシアは知っていた。アレイシアは、セイアーツ教という巨大な宗教をつぶそうは思えない。そんな思い切った事を正直出来ない。弟子が人質に取られたら、などと考えただけでも動けなくなる。

 だけど、セイナは動く。

 周りにとって信じられないと思える事でも、自分が思うままに動く。

 「アレイシア様が、セイナ様の娘?」

 「それって……アレイシア様は」

 「潰すって」

 二人の会話を聞いていた神官たちがこそこそと話している。それを聞いてセイナは、

 「アレイシア」

 と、声をかけて手を振りかざし、アレイシアが自分にかけていた見た目をごまかす《魔術》を解いた。

 「お、お母さん! 何してるの!」

 「何って、貴方は私が動いた事により私の娘だって知られているわ。というか、私がばらすわ。貴方は目立ちたくないって、ハイエルフだって知られずに旅をしたいと思っていたみたいだけど、その結果がこれでしょう? 私の娘だと知られていない方がややこしいわ。私の娘だってわかって手を出す人なんてそうはいないでしょうし。そして貴方は一度、森に連れ帰るわ。ほとぼりがさめるまで森に居なさい。それから……まだ外の世界を見たいというなら、また行けばいいわ」

 《魔術》が解かれた事に慌てるアレイシアに、セイナはそういった。

 セイナは不敵に笑っている。これから、巨大な宗教集団と化したセイアーツ教を徹底的に潰すと宣言しているというのに決して不安も何も感じていない様子で、美しく笑った。

 「アレイシア、貴方を森に帰すわ。フランツと精霊たちとしばらくゆっくりしなさい。あと、アレイシアの弟子の貴方も送るわ」

 「え」

 「え?」

 セイナはそう告げると、戸惑っているアレイシアとベストの様子を気にせずに言葉を発した。

 「対象二人を、アウグスティヌスの森へ。さぁ、行きなさい」

 紡いだ言葉はそれだけだった。だけれども、その言葉だけで複雑な魔術公式が構築される。そして次の瞬間には、二人の存在はその場から消え失せていた。

 「さて、私ももう一仕事して帰りますか。精霊たち、やるわよ」

 『うん!』

 『セイナ様と一緒に暴れるのー』

 『アレイシアを大変な目に合わせた奴を許さないー』

 セイナは精霊達を引き連れて、セイアーツ教を徹底的に潰して回るのだった。





 一日もかからずに、『森の賢者』セイナはセイアーツ教を徹底的に潰した。またセイアーツ教を復活させようという心が信者たちの中で折れるように、徹底的にである。また、復活するようなら再度潰すとセイナは宣言して森へと帰っていくのであった。




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