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23:次に訪れた街のギルドにはエルフがいたので。

 アレイシアとベストはコントスを後にして、次の街に向かっていた。

 目的地はコントスから東、山を越えた先にある冒険者の街と名高いシントンスという街である。

 コントスを予想外に出発したアレイシアは特に次にどこに行こうかなどと考えていなかった。ただ道なりに進んでいれば、シントンスという街が先にあるという標札を見つけたためそこに向かっているだけである。

 道中で魔物に遭遇することもあったが、それは全てアレイシアがさっさと対処をした。もちろん、ベストにも対処ができそうなものはベストに任せていたが、大体がアレイシアが討伐したものである。

 魔物はギルドで引き取ってもらえるのですべて魔術で保存してある。

 アレイシアとともに旅をしながらベストはアレシアの規格外さを改めて実感し、いろいろ考え込んでいたが、その様子にイチは気づいてもアレイシアは気づいていなかった。

 そんなこんなで山を越えて、シントンスに到着した。

 シントンスの街に到着した時、アレイシアとベストは腫物を扱うような目で見られていた。

 「……ノラン様たちに」

 といった声が聞こえていることから、アレイシアにもあのAランクパーティーと一悶着あった事がもうこの街で広まっている事は理解できた。

 「ア、アレイシアさん……どうするの?」

 「んー、とりあえずギルドに行ってみる。そこにエルフがいるならどうにかできるだろうし」

 アレイシアはそんな風に言うが、ベストとしてみればアレイシアがハイエルフであることなども知らず、エルフだからと信頼できるといった態度のアレイシアほど楽観的に考えられないようだ。

 ギルドへと二人と、精霊のイチが向かう間、ずっと彼らは注目されていた。

 その中にはエルフも混ざっている事にアレイシアは気づく。アレイシアが視線を向ければ、エルフたちは驚いた顔をしていた。

 アレイシアはそれを見て少なからずここにアレイシアがいて、それで人のせいで少し面倒なことになっている事はエルフたちに伝わるだろうと考える。

 ギルドにエルフがいたらいいなと考えながら、アレイシアはギルドの扉をくぐった。

 中に入れば、視線を向けられる。

 アレイシアの事がもう広まっているのだろう。これだけ一つ前にいた街での出来事が広まっているという事は、ノラン達が自主的に広めてアレイシアの立場を悪くしようとしているのだろうという事ぐらいアレイシアにも分かった。

 アレイシアがまず人間の受付嬢の元に向かい、魔物を売り払おうとすれば、彼女は拒否をした。

 「ノラン様たちに睨まれているパーティーへの対処なんて私にはできません」

 と。

 だが、その隣にいたエルフの受付嬢は、表情を変えて「ア、アレイシアさん。一先ず、ギルドマスターの元へ向かいましょう」と声をかけたのだった。

 断った人間の受付嬢は何でそんなことを言うのかと不思議そうな顔をしていたが、エルフの受付嬢はアレイシアとベストを連れてギルドマスター室へと向かうのであった。

 「ア、アレイシアさん、大丈夫なのかな?」

 「問題ないと思うわ。ねぇ、受付嬢さん、ギルドマスターはもしかしてエルフかしら」

 「はい! アレイシア様!!」

 ベストの不安そうな声にアレイシアがそういえば、受付嬢は満面の笑みで言った。この場にアレイシアとベストと受付嬢しかいないからか様付けである。

 「さま、付け?」

 「ああ、この子は私の事知らないの。だからギルドマスターと私が話す時、ベスの事お願いしていい?」

 「まぁ、そうなんですの。この子はアレイシア様のなんでしょうか?」

 「弟子みたいなものよ。だからお願い。あとは、私の事は言わないでね」

 「まぁ、アレイシア様の弟子ですか。わかりましたわ」

 ベストは目の前の会話からやっぱりアレイシアが何かしら隠し事をしている事は分かったが、無理やり聞き出す気もないようで、アレイシアがギルドマスター室に入った後、おとなしく受付嬢と待っている事にするのだった。



 そしてアレイシアはギルドマスター室の中へと足を踏み入れる。



 そこにいたのは、一人のエルフである。美しい見目を持つ彼は、アレイシアを見た瞬間頭を下げた。

 「セイナ様のご令嬢であるアレイシア様がこちらに来てくださるなんて光栄です」

 と、そんな風に。

 エルフ族からしてみれば、自分たちの祖と言えるハイエルフはどうしようもないほどに特別なのだ。

 「私はセイレントと申します」

 「セイレントね。よろしく」

 「はい」

 そんな会話を交わして二人はソファへと座る。机を挟んで向かい合っての会話が繰り広げられる。

 「それでアレイシア様、『銀の牙』に目をつけられたようですが、詳細をお伺いしてもよろしいでしょうか」

 「『銀の牙』っていうのね、あのパーティー」

 アレイシアはそんなつぶやきをしてから、コントスでの出来事をセイレントへと詳細に伝える。それを聞いたセイレントの表情はこわばった。

 「仮にもエルフの血が流れておきながらアレイシア様にそのような真似をするとは……許しがたいです」

 「別に私はノランがどうこうしてこようがどうでもいいのだけど、宿に泊まれなかったり、ギルドで対処をしてくれないのは困るからそのあたりだけでもどうにかしてくれないかしら」

 「もちろんです。『銀の牙』にはこちらから注意と処罰もしておきます。例え相手がアレイシア様でなかったとしても、将来有望なギルドメンバーに対しそのような事をやるのは問題なので」

 「お願いね。あとしばらくこの街に滞在するの。だから良い宿はないかしら?」

 「それでしたらエルフの経営する宿がありますので、そちらを紹介します」

 アレイシアはそんな会話を交わし、この街ではとりあえずコントスの時のようなことにはならないという事にほっと息を吐くのであった。



 

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