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22:街に戻ったらややこしい事になっていた

 アレイシア達が街へと戻れば、アレイシアとベストは注目されていた。良い意味ではなく、悪い意味で。

 こそこそと、アレイシアとベストを見てささやきあう声がする。

 「……アレイシアさん、これって」

 「んー、あのハーフエルフ何かしたみたいだね」

 アレイシアはあまり動揺もせずにそう告げた。

 ギルドランクAというのは、それだけ影響力を与える存在である。が、アレイシアはこの世界最高峰の魔術師の娘であり、母親以上に怖いものはいないと思っているのでギルドランクAを敵に回していても特に動揺をしないのである。

 「そ、それって……大丈夫か?」

 「まぁ、大丈夫でしょ」

 『んー、あのハーフエルフムカつくぅー。アレイシアに向かってアホな事言って、馬鹿な事してぇ、燃やしていい?』

 心配そうなベスト、特に気にしていないアレイシア、物騒な様子のイチがそれぞれ口を開く。

 「イチ、燃やしたら駄目だよ」

 「……燃やすっていってるの?」

 「うん。私にアホな事いっていたし、馬鹿な事しているから燃やしたいって」

 アウグスヌスの森に棲んでいる精霊達はセイナとずっと一緒に過ごしてきて、仲良しだ。アレイシアの母親であるセイナの影響を多大に受けており、正直大切ではない存在に関してはゴミと変わらない感覚を持っている。

 「まぁ、何かあっても最悪の場合はイチが守ってくれるし。私たちはただ誘いを断ったってだけで悪い事は何もしていないもの。堂々としていればいいわ」

 「う、うん」

 ベストは周りから悪意のある視線を向けられる事に怯えを見せているが、アレイシアの言葉に頷くのだった。

 アレイシアとて、こうして悪意に晒された事はあまりないのだが、両親からどうしようもないほどの悪意のある事については聞いていた。母親であるセイナは人間に利用され、その結果森の中にひきこもる事を選んだ。父親もまた人間に利用され、加えて自由と意志を奪われていたのをセイナが助けたのだと聞いている。

 外に出たいと何度も口にした時、散々注意しなければいけないといわれてきたのだ。特に、人間には注意をするようにと。

 ただ正直な話、エルフの血を継いでいるハーフエルフにこうして悪意を向けられる事はあまり考えていなかった。エルフは基本的にハイエルフを慕っているし、ハーフエルフも、親からその話を聞かされていたからだ。

 だからセイナも基本的にはエルフに連なるものは安心して接して良いと言っていた。が、時が経つにつれてそういうハーフエルフも出てきたのだという事だ。

 ギルドへの報告は受け付けてはくれたがぎこちないものだった。また、あのハーフエルフのパーティーがニヤニヤしてみていた。

 断っただけでこんな風になるなんてと考えながら宿に向かえば、

 「すまないね。高位ランク者に睨まれているものを泊めるわけにはいかないよ」

 などといってお金を返され、追い返されてしまった。

 そして街の中をぶらぶらと歩く。宿も探していたが、断られてしまった。

 「野宿する?」

 「……ア、アレイシアさんなんでそんなに冷静なの!?」

 「別に焦る事じゃないでしょ。この街出ればいいだけだし。それに私は別に野宿でも構わないし」

 アレイシアは森育ちで、自然の中で暮らす事には慣れきっているので特に野宿でも気にしていないようだった。

 「あー……そっか」

 「うん。街でようか」

 「うん」

 そんな会話を交わして二人は街から出ていこうとしたのだが、目の前に人影が立ちふさがった。

 「困っているんだろう? 俺らと依頼をこなしてくれるなら――」

 「ベス、行こうか」

 「う、うん」

 現れたノラン達パーティーを華麗に無視して、アレイシアはベストの手を引いて去っていこうとする。

 「待て、無視をするな! この俺を無視して――」

 「低ランクのくせにノランを無視するなんて」

 「ノランの頼みを断るなんて何様なの?」

 『煩い』

 ボッと突然、ノラン達パーティーの周りに炎が現れる。

 「イチ、炎なんて出しちゃだめよ。こんなのでも手を出したら面倒でしょう?」

 『んー、無理。むかつくもん。アレイシアぁ、僕がこれ足止めするから、行っていいよー』

 「ありがとう。イチ。殺しちゃ駄目よ」

 『うん。アレイシアが困るからしないよ」

 アレイシアとイチは呑気に会話を交わしているが、それ以外はそれどころではない。ノラン達は必死に周りに存在する炎をどうにかしようとするが、精霊の生み出したそれに、アレイシアより凄腕と自称する魔術師もどうする事も出来ない。というよりも消しても消してもわいてきているので対処ができていない。

 周りはその様子に固まっている。その隙にアレイシアは固まっているベストの手を引いて、街の外へと出ていくのであった。


 

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