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17:二つ目の街

 「わぁ」

 休み休みに移動を繰り返して、ようやくついた新しい街――コントス。

 その街にたどり着いたアレイシアは、感嘆の声を上げた。シュノサイドの街よりも規模は小さい。人の数も少ない。普通の人にとって見れば真新しい事も何もない。でも、アウグスヌスの森から出た事のなかったアレイシアにとってみれば、普通の街の光景一つも面白かった。

 「シュノサイドとはだいぶ違うね」

 アレイシアが面白いと思っていた事といえば、同じ人間の街であるのにシュノサイドとはまた違った光景が目の前に広がっていることである。何を当たり前の事を言っているのだといわれそうだが、アレイシアにとってみればそのことが面白かった。

 目を輝かせて、街を見るアレイシアにベストは声をかける。

 「……アレイシアさん?」

 「ねぇ、ベス。街の探検しよう!」

 「え?」

 正直、このコントスにたどり着くまでの移動で疲労しきっているベストにとってその言葉には青ざめた。すぐに宿に向かって休みたかったらしい。

 しかしハイエルフであり、そんな休みたいという考えが全然頭に浮かんでいないアレイシアは続ける。

 「シュノサイドとはどれだけ違うのかとか、この街がどんなつくりしているのかとか、色々知りたいの。それにお店の場所とかわかったら後から楽だもの。ね、探検しよう」

 笑顔でアレイシアにそういわれて、結局「宿に行きたい」と言えなかったベストはともに探検をすることになった。

 ちなみにイチはベストの「休みたい」という思いを知ってはいたが、アレイシアの願いが優先なため、アレイシアにそれを言わなかった。

 

 そんなわけで二人と精霊一匹は、新しい街の探検に向かった。



 「えーっと、ここがレストラン街なんだね。わー。シュノサイドとは違った食べ物も沢山あるかな?」

 「あると思うよ。街が違えばとれるものも違うだろうし。といってもシュノサイドと隣街だからあんまり変わらないと思うけど」

 「わー、そうなの。人間の街って沢山あるし、全部が全部違うって聞いてたけど本当なんだね」

 アウグスヌスの森という、生まれ故郷から出た事のなかったアレイシアにとってみればそれだけでも面白い事であるらしい。

 満面の笑顔を浮かべて楽しそうなアレイシアに、ベストも含む周りは見とれている。

 嬉しそうに歩きだすアレイシアにベストは慌ててついていく。

 「ね、ベス、あれって何屋さんかな?」

 「あれは、多分――」

 「ね、ベス、あれって」

 アレイシアが師匠で、ベストが弟子という関係であったが、人間の街に関して言えばベストの方が先輩である。アレイシアはそれはもう世間知らずなため、ベストの方が常識を知っているだろう。

 ある程度町の中を探索し終わった頃には、すっかり日がくれていた。

 ギルドの場所も把握していたが、まだその扉をくぐってもいない。

 「あ、宿取らなきゃね」

 「うん。宿は何軒かあったけれどどうする?」

 「じゃあ――あの窓から街を見渡せそうな宿」

 アレイシアがそういって向かったのは、”烏亭”という名の宿であった。宿の面積は小さいものの、上に伸びている構造になっている宿だ。上の方の部屋から街中が見渡しやすそうという理由で選んだらしい。

 そして宿に向かって、アレイシアは一部屋を取った。

 「って、アレイシアさん、同じ部屋?」

 「うん。一部屋の方が安いでしょう?」

 「え、で、でも」

 「何か問題ある?」

 「俺男で、アレイシアさん女で……」

 「ん? 何か問題ある?」

 アレイシアは世間知らずであり、男女で同じ一室の問題をよくわかっていなかった。

 『アレイシアー、この人間はアレイシアと間違いが起こったらどうするんだと思っているのかもー。そんなの僕がさせないけど』

 「間違い?」

 『アレイシアはぁ、わかんなくてもいいよ。とりあえず、僕がなんとかするから問題あにっていっといてー』

 とイチがいうので、アレイシアがそのことをベストにいう。そうすればベストは「そっか。精霊がいたんだっけ」と言い放った。

 そんなわけで同じ部屋で寝泊りすることになったが、イチもいるわけで間違いも起こりようのない二人であった。

 そもそもアレイシアはもう百歳を超えており、十四歳のベストなんて子供としてしか見ていない。元人間である両親とは異なり、アレイシアは生粋のハイエルフであり、人間との考え方は相当違うのであった。



 その後、宿内にあったレストランで夕食をとり、二人で部屋へと入る。ベッドは一つしかなかったわけだが、アレイシアはさっさと眠り、ベストはアレイシアが隣にいるということで中々寝付けないのであった。




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