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15:次の町に向かうか考えてみる。

 「うーん、ねぇ、イチ。人間の寿命って凄く短いんだよね?」

 『そうだよ? それがぁ?』

 「ベスって人間でしょう? 私はハイエルフだから時間はいくらでもあるけれど、ベスにはないでしょう?」

 アレイシアはそんなことを借りている宿の一室でイチに告げる。

 ベストは人間。

 アレイシアはハイエルフ。

 その寿命の差は大きい。第一ハイエルフは、そもそも寿命がどれだけ長いかもわからない。魔力の多さによって寿命が決まるこの世界で、ハイエルフという種族は、それだけの膨大な魔力を所持している。

 ハイエルフという種族はアレイシアを含めてたったの四人しかおらず、その中で最も長寿なセイナは700年以上生きていながらまだまだ老いる気配がない。本当に幾らでも寿命があるといえる種族だ。

 『それが、どうしたの?』

 「私、弟子とかとるならちゃんとやった方がいいとは思うの。私はうまく教えられないかもしれないけど、色々経験してもらった方がいいとも思うし。

 それ考えたらずっとこの町に居続けるのもなーって思って。どうせ世界は見て回るつもりだったから、ベスを連れてみて回ってもいいかなーって」

 『人間の事なんか考えなくていいと思うよ? アレイシアがぁ、好きなようにすればいいよ』

 「……イチって、人間嫌い?」

 『セイナ様が、人間に大変な思いぃ、させられたもん。僕らを、悪用したりとかもぉするし』

 精霊は、というよりセイナと共にアウグスヌスの森で暮らしてきた精霊たちは人間という種族に対しての好感度がゼロに近い。

 精霊たちは『森の賢者』と呼ばれるセイナの事が大好きである。ずっとともに暮らしていたのもあって、そこには種族を超えた絆が存在している。そもそも精霊であるイチがアレイシアに優しくしているのもアレイシアがセイナの娘だからというのも大きい。

 「うーん、でもベスは私をハイエルフなんて知らないし、悪い子じゃないと思うんだけど」

 『それは、そう。でも、時は人間をぉ、変えるよ? アキヒサはー、それで色々やらかして、セイナ様にボッコボコされてたよぉ?』

 「あーっと……それ、お母さんをアキヒサ叔父さんが恐れている理由? なんとなくしか聞いたことないのよね。アキヒサ叔父さんは『俺のかっこ悪い所を会いレイシアに教えたくない!』とかいって全然教えてくれなかったし」

 『んー、アキヒサ、仲良かった人、変わった。でも、それ理解しなくてー。やらかしてー。セイナ様にボッコボコ!』

 とりあえず、仲良かった人が変わった事を理解せずに、色々やらかしたらしいというのだけはわかった。

 『アレイシア、人間にとってね、十年とかはぁ、長いんだよ。それだけの期間で、変わったりとか、するのー』

 なんて言われて、アレイシアは頭を悩ます。

 正直な話、ハイエルフであるアレイシアにとって十年というのは短い期間だ。それだけの時間でも人が変わるのには十分なのだという、その感覚はよくわからない。

 でも、なんとなくはわかる。

 アレイシアは両親とエルフたちとかとしかかかわらず優しい世界で生きてきたけれども、そういう話は知っている。

 「うーん、難しいね。でも、今はまだベスは悪い子じゃない。もし私がハイエルフだって知ってそれでどうこうあるようなら、それまでだよ。

 とりあえずね! イチ、私は今はベスの寿命が短いから、その短い間で折角だからどれだけ教えれるかなーって考えているの。そのために、もっといろいろな場所へ行った方がいいかなって」

 一旦、アレイシアはそういって話を変えた。

 たとえ、後でベストが変わってしまってもそれならそれまでだと、そんな風に言い切って。もし将来変わって、自分と敵対したり、自分を利用してこようとしたとしても問題がないとそんな風に笑って。

 そして、弟子にしたのだから色々教えた方がいいのかなっていう前向きな思いを口にする。

 アレイシアは人間に対して、好きとも嫌いとも感じていない。そういう思いがわくほど人間という種族と共に過ごしてきていないからだ。

 『アレイシアが、そうしたいならそうしたらー? でも、あいつ、妙な真似したら、僕が燃やすよー?』

 「……イチ、燃やしちゃダメよ?」

 『いーや、燃やすのー。セイナ様にもアレイシアをお願いって言われているんだもん』

 「もし何かあったとしてもなるべく私自身でどうにかするから、ね?」

 『んー、じゃあ、アレイシアがどうにかできる範囲は見とくよぉ。でも、無理そうならぁ、燃やすよー?』

 イチは燃やす燃やすと口にして本当に何とも物騒である。

 しかしそれがイチの妥協できる範囲であるらしい。セイナに頼まれているのもあって、イチはアレイシアに対して驚くほどに過保護である。

 「……そんなことにならなければ一番いいんだけど。

 とりあえず、今後どうするか、一回ベスに聞いてみるわ。それからね」

 アレイシアは呆れたようにそう口にするのであった。




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