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10:魔術ってものは、一般人にとっては難しいものらしい。

 アレイシアがシュノサイドの町にやってきて、一週間ほど経過がした。その間、アレイシアは適当に依頼をこなしてきたり、図書館で色々と学んだりしていた。

 あるとき、ハイエルフを信仰している『セイアーツ教』がうろうろしていて、少しばれるかなとどきまぎしたりもしていたが。ちなみに『セイアーツ教』の名前の由来はハイエルフである『セイナ』、『アキヒサ』、『フランツ』の名前の文字をそれぞれとっているだけである。アレイシアはそれを知った時、自分も知られたら自分の名前も含まれるのだろうか、とそんな気分になったものである。

 まぁ、そういう宗教は何とも言えない気持ちになるものの、アレイシアは外の世界を大変満喫していた。

 はじめてみるものが沢山溢れていて、ヒレンやヒッサンにあれは何? と何度も何度も問いかけてほほえましい目で見られてしまい、いたたまれなくなったりもした。アレイシアは百歳を超えている。自分のほうが年上だというのに、知らないことが多すぎることに何とも言えない気持ちになったのも仕方がないことだろう。

 事情を知っているヒレンは「アレイシアさんは外に出た事ありませんからね」と納得していたが、ヒッサンは「アレイシア殿は箱入り娘だったのだな」などと言われてしまったものである。

 「アレイシアさん」

 その日、アレイシアが美味しいお店を探そうと、肩にイチを乗せてのんびりと歩いてたら声をかけられた。後ろを振り向けば、そこにはヒレンがいた。ギルドの制服は着ていない。今日は非番なのだろう。

 「ヒレンだ、どうしたの?」

 『ヒレン! 何かようー?』

 アレイシアとイチはヒレンの顔を見ると、そういって問いかけた。

 「今時間はおありですか?」

 「あるよ。どうしたの?」

 『何か用事があるのー?』

 「ええ、実はあの、魔術について教わりたいのですわ」

 ヒレンはそういって、アレイシアとイチの事を言う。そんなことを言われて、アレイシアは驚いたような表情を浮かべた。

 「魔術について?」

 「ええ。この町には私のほかにも数人ほどエルフがいるのです。彼らは冒険者をしておりまして、魔術を教わりたいということですわ。あと私自身もエルフの受付嬢をしている身ですから、護身用にアレイシアさんに教えをこえないかと思いまして」

 ヒレンはそう告げて、笑みを浮かべる。

 アレイシアとしてみれば、特に断る理由はない。ただ、アレイシア自身、ハイエルフである自分についてそれほど理解しているわけではない。正直な話を言えば、自分にそれを教えるだけの力量があるのか、と考えてもよくわからない。

 「いいけど、私はお母さんほど魔術について詳しくないし、うまく教えられはしないと思うんだけど…」

 「それでも全然大丈夫ですわ!」

 と、それはもう良い笑顔で押し切られ、アレイシアとイチはヒレンの家へと向かうことになった。



 そしてヒレンの家の中でアレイシアはエルフたちに向かって魔術を教えることになったわけだ。



 ヒレンの住まいは一人暮らしをするにしては広い。それだけギルドの受付嬢というのが儲かるということなのだろう。

 











 ギルドの受付嬢というのは、それなりに儲かる仕事であるらしい。

 連れてこられたヒレンの家というのは、アレイシアが予想していたよりも随分広かった。

 その場にいたエルフたちは、この場にハイエルフであるアレイシアとヒレン含めたエルフ四名と、精霊であるイチしかいないからか知らないが、アレイシアが表れた途端ひれ伏した。

 反応に困ったアレイシアであるが、ハイエルフという存在はそれだけエルフたちにとっては特別な存在であるらしかった。正直ハイエルフ本人であるアレイシアからしてみればそんな実感は欠片もない。

 でもまぁ、そういう態度は仕方ないからあきらめようというわけで、アレイシアはそういう態度を気にしないことにして魔術に対して教えることにしたのだが、

 「魔術公式を構築して、言霊を乗せてやればいいんだよ、魔術なんて」

 という、アレイシアの教えはヒレンを含むエルフたちには理解されなかった。

 エルフの里にはハイエルフの一人であるアキヒサがおり、彼の教えによりエルフはほかの種族に比べて魔術というものに対する理解は高い。とはいってもハイエルフという存在そのものが規格外な存在の教えというものは、エルフたちにとってもよくわからなかった。

 「アレイシアさん、そういう説明をされてもわかりませんわ」

 「え、わかんない? ほら、こんな感じでさ」

 アレイシアはヒレンの言葉にそういって、手をかざす。

 「光よ、満ちて」

 そんな言葉と共にアレイシアのすぐ隣には魔術公式が浮かび上がる。それは完成されると、一筋の光が溢れる。

 アレイシアは簡単に行っているが、魔術に対する深い理解と魔術の知識を持っていなければこんな風に魔術を行使することはできない。アレイシアは生まれた時から100年もの間、この世界で最も魔術を極めている『森の賢者』に教えられて生きてきたからこそ、こういう真似ができるだけの話である。

 「……アレイシアさん、普通の人々は魔術公式をそんな簡単に構成することはできませんわ」

 「え、そうなの?」

 「ええ、やはり貴方様は至高のハイエルフの一員ですわね。そうじゃなければこんな真似できませんもの。アレイシアさん、まずは魔術公式について私たちに伝授してもらっていいでしょうか?」

 「えっと、いいけど、私お母さんほどうまくは説明できないよ?」

 「それでも問題ありませんわ」

 そう自信満々にヒレンたちがうなずくから、アレイシアは頑張って魔術公式について教えた。



 最も自分は魔術を行使出来ても、それについて教えることがうまくできなかったアレイシアであるから、結局ヒレンたちはいくら説明されてもそこまで詳しくは尼術を理解することはできなかった。

 アレイシアは一般人にとって魔術って難しいんだーっと唖然とした経験であった。




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