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恋愛ごっこ  作者: faye
□第三章:閉めかけた扉
17/23

□ケンカになるのは分かってたわけで。

どうしてこんな事になってしまったんだろうかと。

思い出せばキリがないけれど。


例えばの話だけれども、

一つ一つの選択肢が試されるその岐路で、

そこで別の選択をしていたら、

一体どうなっていたのかと考えたこともある。


常にそんな事を考えてしまう自分はおかしいだろうか。

もう潮時だと分かっているのだけれど。

今までのことを、全部忘れて行きたいと思うのだけれど。

そうやれない自分がいるのも、これまた事実で。


美和は会社の近くにあるバーのカウンターに座り、

坂下が来るのを待っていたのだった。


電話があったのは夕方。

金曜の夜という事もあり、また明日も休めそうだったため、

坂下の誘いに乗り、バーで待ち合わせをしている。

15分ほど待っているが、坂下はまだ現れそうにない。


坂下と会うのは久しぶりだ。

嘘を吐いてしまって、時間は大分経ってしまったが、

その時間分、何となく溝を作ってしまったような気がしていたのだった。

それ以来、坂下のことを気に掛けていても、

美和から連絡を取ることが出来ないでいたのだ。


「ごめん、待った?」

ぼんやりとしていると、坂下の声が頭に響き、我に返った。

「ううん、全然大丈夫」

「こっちが待つつもりだったんだけど、失敗」

坂下は苦笑し、美和の隣に座る。

「どうかしたの?今日急に誘われるから、ちょっとびっくりした」

「ん?誘ったらまずかった?」

「そんな事ない」

美和は首を振り、坂下とグラスを合わせた。

チン、といういい音が響く。

「あ。ねぇ、もしかしてバレンタインのチョコレート期待してた?

ごめんだけど、買ってないからね」

「期待してないよ。会社で山ほどもらったし、別にいい」

「あ~そう。モテる人は違うのね。

だったら私以外の人をたまには誘いなさいよ」

「今のところ誘いたいのはあんただけだよ」

「……しまった…墓穴」

美和はカウンターに肘を付き、顔を見られまいと正面を見た。


割と込み合っている店内。

バーテンダーは忙しそうにグラスを拭き、新しいカクテルを作っている。

「…今日…電話もらったときにね」

「ん?」

「大阪からこっちに戻ってくる途中だったの」

「…あぁ、出張だった?疲れてるのに、急にごめん」

坂下は突如誘ったことを詫びた。

美和はううん、と首を振り、大丈夫、と付け加える。

「最近、電話もメールもなかったから、ちょっと気になってたの。

すごいタイミングだったから、何かね」

「…あぁ、ちょっといろいろ忙しかったんだ」

坂下は言葉を濁すように、グラスの中のお酒を煽る。

「いや、そう言うと大袈裟だけど。

ただ、ちょっと落ち着いて時間作れなかっただけ」

「うん…タイミングよく電話くれて良かった。ちょっと話したかったし」

「何?」

「いや…どこから話したらいいのかな…。

よく分からないんだけど、私たちってさ…これからどうすべきなのかな」

「……」

「私は…どの選択肢を選んだらいいのか…」

「…今のオレにはあんたの説明がよく分からないけど」

そうだよね、と美和はため息をつく。

説明がうまく出来そうにない。

話を続けることが難しく、しばらく沈黙が流れた。

ゆったりと流れる音楽を聴きながら、ただ座っている。

「どこか行く?」

沈黙を破ったのは、坂下だった。

美和は同意し、二人ともほぼ同時に席を立った。


バーを出て、少し歩くとバレンタインの時期に合わせてか、

イルミネーションがまだまだ飾られている。

歩いているのも、カップルが多い。

たくさんのLED電球に彩られた木々が、

とても遠くまで続いているようだった。

冬の木々は葉を付けないが、その分キレイな明かりを纏っていた。

「こうやって、イルミネーションを落ち着いて見る事って、なかったかも」

美和は時折上を見上げながら、寒さで悴む手をポケットに入れた。

キレイ、とつぶやき、坂下を見る。

坂下は微笑んだまま、何も言わずに少し先を歩いた。

「仕事ばっかりもよくないね。たまには、夜ゆっくり帰るのも悪くないね」

まぁね、という坂下の声が聞こえた。

美和は少し早歩きで、坂下の隣に並び、また木々を眺める。


「さっき、言いかけた事だけど…」

「いいよ、聞きたくないから」

坂下は美和の言葉を遮り、先に歩き始める。

「……待ってよ」

「いい話じゃないだろ?聞く気ないよ」

「待ってよ、ねぇ」

誘ったくせに卑怯じゃない、と文句をつけても、坂下は歩くのをやめない。

美和はイラつき、坂下の腕をつかんだ。

「本気にならないでよ。遊びで良いって言ったのはあなたでしょ」

「……」

坂下は何も答えず、眉間にしわを寄せ、むっとした表情で美和を見た。

「…ずるい人。バッカじゃない」

「あんたはどう思ってるわけ?」

「…分からないから悩んでるのよ。あなたみたいに余裕がないから、

私一人、悩んだりして、バカみたい…」

「……」

「宙ぶらりんで、ただやる事だけはしっかりやっちゃって。

自分の浅はかさにも涙が出そうよ…」

坂下は何も言わない。

というよりも、言葉を出すことが出来ずにいた。

本気になってしまうと、負けなのは分かっている。

手放したくないくらい、はまってしまっているのも分かっている。

ようやく口に出来た言葉は、自分でも情けないものだった。

「…ごめん、帰る」

「……ホントムカつく」

美和に別れもつけず、背を向けて歩き出す。

なんて格好悪い男だろうかと、自分でも情けない位に感じてくる。

すると、ぼこっと背中に何か投げられ、命中した。

キレイにラッピングされた箱が、背中に当たった衝撃と、

地面に転げ落ちた衝撃で、思い切り凹んでいた。

「……」

坂下は無言でその箱を拾い、頭を抱えて更にはため息をついた。

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