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悪の魔法少女は、絶賛、戦闘中☆

 この世界には、善と悪の魔法少女と魔法少年がいる。

 彼らが存在する理由は、魔法のある異世界の魔法生物ソルトが、学校の卒業試験もかねてこの世界の人間と契約し、代理で競い合わせるためである。

 その魔法少女や魔法少年は、ある地域に正義と悪がおり、戦う事を宿命付けられている。

 そしてどちらかの魔法少女か少年が勝利すると、別の地域の魔法少女や少年に攻撃を加え勝利すれば、自分達の支配領域を増やしていく。

 そうやって最終的にある期間までどれだけその領域を増やしたかで、ソルト達の試験の点数が決まるらしい。

 と、いうわけで今日も今日とて、ご当地魔法少女達は戦いを繰り広げるのであった。





「今日こそはお前を倒すぞ! 悪の魔法少女、ココ・ベル!」


 そう元気よく叫ぶ、銀髪に青い瞳の魔法少年トト・ウッドを私は一瞥して笑う。


「ふん、この前私に負けそうになって泣きそうになっていたくせに」

「! そんな事ない! 今日こそお前を倒してやる!」

「それはこちらの台詞だわ!」


 そう叫んでで私はピンク色の、チアリーダーが持っているようなステッキで、目の前の魔法少年を殴りつける。

 けれどそれは青色のステッキで魔法少年トト・ウッドが防御される。


「素直にやられなさいよ! そうすれば私が、貴方の分まで頑張ってあげるわよ?」

「お断りだ! そして今日こそ俺が勝つ!」

「へー、今まで私に負けていたって認めるの?」

「引き分けだったんだから俺は負けていない!」

「だったら今日が貴方のお終いの日よ!」


 お互い睨みあいながら暫くそのままでいたが、このままでは埒が明かないと即座に魔法少年トト・ウッドから私は距離をとる。

 そして、私はそのステッキを空高く掲げて、


「召喚魔法、発動!」


 その掛け声と共に、ステッキから白い光がの円が放出されてそこから大量のエビフライが召喚される。

 宙に浮かぶ何十本ものエビフライを相手に、魔法少年トト・ウッドは怯む。

 当然だろう、彼はこのエビフライが大好物なのだから!


「エビフライ攻撃、はじめ!」


 その言葉と共に、魔法少年トト・ウッドに向かって、大量のエビフライが降り注ぐ!

 だが、魔法少年トト・ウッドはそれを睨みつけると同時に魔法を使う。


「風魔法、発動!」


 同時に風に揺られてエビフライが空高く巻き上げられる。

 それを見て私は、


「そんな時間稼ぎをしてどうするつもり!」

「分っていないな、ココ・ベル! その僅かな時間でいい。何故なら、その全てを俺が食べるからだ!」

「! まさか、本気なの!」

「本気だとも、見ていろ!」


 そう言って、次々とエビフライを食べあげていく魔法少年トト・ウッドだが、その隙を私は見逃さなかった。

 即座にステッキを握り締め、魔法少年トト・ウッドの元へと走って行き、


「ここでお前は終わりだ!」


 ステッキを振り下ろす私。

 けれど即座にそれは、魔法少年トト・ウッドに防がれてしまう。


「残念だったな、片方の手があればお前の攻撃など簡単に防げるのさ!」

「何ですって、この!」

「ここでエビフライは食べ終わった! 今日こそ倒してやる!」

「しまった!」 


 焦る私だが時はすでに遅し。

 と、何とか防御をしようとした矢先、私と魔法少年トト・ウッドの二人に向かって炎の塊が降り注ぐ。


「はははは、お前達を倒して、この地域をこの私、リリ・フラワーが支配してやる!」


 現れた魔法少女がそう叫んだのだが、もちろん私や魔法少年トト・ウッドには容易に防御できる程度のもので、適当に防御した。

 そこで魔法少年トト・ウッドが、


「ここはいつもの通り、休戦しないか?」

「仕方がないわね、あんなぽっと出の奴に負けるのは私も気に入らないから、いいわよ」


 そして二人がかりでその魔法少女を倒して、持っていた検定バッチを壊された魔法少女が、


「2対1で攻撃なんて酷いわ」

「そっちが不意打ちしてきたんだろう!」

「戦いに、酷いも何もないわ! 勝てば正義なのよ!」


 と、いったやり取りをしていると時間切れになってしまう。

 魔法少女や魔法少年になれる時間は決まっているのだ。

 そして魔法少女や少年が戦うのは、人だけが消えてその該当地域の建物やらが再現された行く浮かんで戦う事となっている。

 そしてその空間には何処からでも入る事ができ、髪の色や瞳の色も変身するのでお互いの素性が分らないままである。

 そして私は、いつもの学校の帰り道に戻されて、深々と嘆息する。


「今日も引き分けだったわ。何時になったらあいつを倒せるんだか」


 そう、私こと、秋山鈴は再び溜息をついた。

 ここ一ヶ月近く毎日戦っているが、一向に決着がつかない。

 他の地域の魔法少女や魔法少年は勝敗が決まって、支配地域獲得に精を出しているのだが、いまだここは二人で争ったままで、迫り来る魔法少女や魔法少年を返り討ちにして領域を着々と増やしていた。

 ただ二人のどちらかが勝たなければ2分割されて取り分が少なくなるので、私は早く勝ちたかった。

 ちなみに私は、悪の魔法少女である。









 いつものように、中学校に私は登校したのは良いのだが、


「よく来たな、秋山鈴! 今日こそはお前に勝利し……」

「園木俊樹、御託はいいわ、かかってきなさい!」


 と、いつものように幼馴染で腐れ縁の男子、園木俊樹と取っ組み合いの戦いをしていた。

 このような行動を取るのにはわけがある。

 ある日、彼が言ったのだ。


「俺が50回勝ったら、お願いをかなえてもらうからな!」


 元気が良い俊樹が、何故かその時顔を赤らめていたのだが、その意味が私にはよく分らなかった。

 けれど私は売られた喧嘩を買う主義だったのですぐに頷いた。

 そして本日も引き分けとなり、私の、10勝5敗22引き分けが決まったわけだが。


「鈴、お疲れ」

「あ、明菜、おはよう」

「おはよう! 今日もまた俊樹君勝てなかったね」

「どうして皆俊樹に好意的なのよ」

「だって、ねぇ……こう、面白いから言わないけれどね」

「明菜……それで、今日の小テストは国語だっけ」


 そんな話を私は明菜とする。

 川田明菜は私の友達で穏やかな優しい女の子である。

 なのに文系に見えて、国語がからきし駄目で数学が得意だったりする。

 私も時々教えてもらうのだが、どうして国語が出来ないのか聞いてみると、


「一つの事に断定できなくて。こうも考えられるんじゃないかって、複数パターンで考えちゃうから分らないの」

 

 と、よく分らない答えが返ってきた。

 なので私は、深く考えることをせずに教えてもらう事のする。

 ホームルームが終わり授業を受ける。

 そうして昼休みが来て、屋上で私と明菜はご飯を食べる。

 ついでに、小さなおせんべいの袋を取り出して、


「ココ、ご飯だよ!」

「はーい、待ってました! やっぱり鞄は狭いよ」


 そう言って鈴の鞄から現れたのは魔法生物ソルトであるココ。

 羽の生えた妖精の少女のような姿で、彼女と契約する事で、私は悪の魔法少女ココ・ベルに変身できるのだ。

 そんな彼女は、薄焼き塩せんべいがお気に入りで、一日一食それを食べている。

 そこで明菜がココを見て、


「いいな、魔法少女って、私もなれないの?」

「うーん、もう契約期間過ぎていますし、普通は一人しか契約できないんです」

「そうなんだ。私も魔法って使ってみたいな」

「そうですかー、あ、もしかしたらそのうち補助魔法少女契約が出来るようになるかも」

「そうなんですか! その時はよろしくね、ココちゃん!」

「お任せを! 鈴もいいよね?」

「それはまあ。怪我をするわけじゃないし何か代償があるわけでもないからね」


 そう私は頷く。

 この魔法少女は、ちょっとしたくじ引きのようなもので、勝利すると最終的にちょっとした景品と異世界に行ったりする権利がもらえるらしい。

 もちろん安全も保障されている。

 そんなわけで、私はやっているわけだが、


「でもあの魔法少年、トト・ウッド。中々倒せないし、他の奴らが襲ってくるから一向に倒せない」

「あいつについているソルトのトトは、強いですからね、ということで」


 今の処そういった話で鈴と魔法生物ココの間では通っているのでそういうことにする。 

 それは置いておいて、鈴は気になることを聞いてみた。


「知り合いなの?」

「ええ、幼馴染なんです。元気が良くて、いつも一緒だった単純で明快で思い立ったら突進型の。しかも私を追いかけて同じ所を受ける事に決めたらしいです」

「何だか俊樹に似ているわね。でも確かココは悪の魔法学校所属だよね? 何で正義の魔法学校に行かなかったの?」

「試験日を間違えまして。それで受かった後、トトに一緒の学校に行きたかったのにと愚痴られました。しかも勝ったら今度こそ言う事があるんだからなって、まったく何を言う気なんだか」

 

 そんな深々と嘆息するココ。

 それを見ていた明菜は、本当に似たもの同士だなと心の中で思ったのだった。






 園木俊樹は校舎裏でご飯を食べながら、少年に羽の生えた妖精のような姿をした魔法生物トトとメガネの輝きが素敵な友人の吉田宏に愚痴を零していた。


「一向にあいつに勝てない」

「まあまあ、そんなの無しで告白しちゃったら?」

「だってそんなの、恥ずかしいじゃないか!」


 さっさと告白してしまえと煽る友人である宏に俊樹は呻く。

 はっきり言って、園木俊樹はあの気の強い秋山鈴が好きなのである、昔から。

 昔は友人として好きだと思っていたのだが、気づけば特別な女の子になっていた。

 だから、こんな形で頑張っているのだが、そこで魔法生物トトが、


「分る分る。俺だってココの事が好きで、一緒の学園生活がしたいと思ったのに……あいつ、悪の方に行きやがった」

「どうしてだ、トトの事を騙したのか?」

「試験日間違えたんだ、あいつが」

「……トトも大変だな。でも口説く時間を少しでも早めるために、早くあの悪の魔法少女ココ・ベルを倒さないとな!」

「え? いいよ、出来れば拮抗してくれた方が俺は嬉しいかな」

「何でだ?」

「だってそうすればココに毎回会えるじゃないか」

「学校が変わっても、こういった形以外で会えるんだろう?」

「いや、告白する自信もないし、用がないのに会いにいけないし、だったらこうやって戦っている間でも会えたらいいなとは思う」


 そう溜息を尽きながら言うトトだがそこで俊樹は半眼になり、


「まさかトト、わざと相打ちになるように画策しているんじゃ……」

「そんな能力俺にあると思うか」

「……そうだな」


 お互いの性格がそっくりなので、俊樹とトトは顔を見合わせて嘆息した。

 それに、あの悪の魔法少女であるココ・ベルは確かに拮抗するくらい強いのだ。

 そして姿形はココ・ベルは、何処となく鈴に似ているのである。

 だからその分、俊樹としては負けるのが悔しいのだが。


「あの悪の魔法少女、ココ・ベルの正体、まさか鈴じゃないだろうな?」

「まさか、どれだけ君くらいの年代の人間がいると思っているんだ」

「そうだよな……」


 と、そこまで黙っていた宏がメガネを光らせて、


「僕を君の仲間にしてくれれば僕も確認できるんだけれどね」

「うーん、まだその補助用のキャラ募集はやっていないんだ」

「その時は真っ先に僕を指名してくれると嬉しいな」

「おう、楽しみにしていてくれ」


 簡単に魔法生物トトは宏に約束をしてしまう。

 この魔法少年に選ばれた時は、世界を救う凄いものだと思い契約したし、それに、


「この世界が危機に瀕しているんだな、そうなんだな!」

「う、うん」


 頷いた魔法生物トトに俊樹は確信を強めていた。

 ちなみに魔法生物トトは俊樹の情熱に流されて未だに、世界を救う重要なものとかではなく、ただの俺達の試験ですとは未だにいえないでいた。

 魔法生物トトとココの関係や学校の試験やらなにやら色々ヒントがあったのに、俊樹はまったく気づいていなかった。

 なので相変わらず俊樹は誤解したまま、悪の魔法少女を倒すのだといき勇む。

 自体が急転するのは、放課後の戦闘での事だった。






 正直、途中までは計算どおりだったと、悪の魔法少女ココ・ベルは思う。


「いけっ! 必殺肉球パーンチ!」

「この、風よ渦巻けぇえええ」


 その日の放課後いつものように戦闘をしていた私。

 巨大な肉球を片手に召喚した私の体の動きを崩すために、魔法少年トト・ウッドは風を渦巻かせる。

 そのお陰でそれに流されるつもりのない私は僅かに左に避けた。

 けれどその動きが鈍くなった所をトト・ウッドが見逃すはずもなく、


「もらった!」

「しまった!」


 風がトト・ウッドの周りを渦巻く。そこで、


「油断しすぎですわ。この程度なら、簡単に倒せますわね」


 その少女の声と共に、トト・ウッドの背に炎の塊が降り注いだのだった。






 炎の塊がトト・ウッドの背後に迫り、慌てて彼はその炎の塊を受け止めようとして……間に合わなかった。


「ぐあっ」

「トト・ウッド……大丈夫!」


 焦って私は、そのまま地面に落ちそうな彼を肉球な手で受け止める。

 近くまで引き寄せて、息がある事を確認してから私はその攻撃してきた相手を、防御用の壁を張りながらにらみ付けた。


「あなた、何?」

「私は、ここよりも東の悪の魔法少女リリ・バードですわ。頂点に立つために、貴方方を倒しに来ましたが、この程度なら簡単に倒せそうですわね」


 そう緑色の髪をして、赤い瞳の少女は笑う。

 そんな彼女に私は、おかしくて堪らなくなる。


「もしかして、貴方……馬鹿?」

「……なんですって?」

「分ってないなぁ、本当に分ってない。まだまだ私とトト・ウッドの戦いはじゃれあいの域を出ていないのよ」

「ふーん、負け惜しみね」

「ここで負ける貴方がそれを知る必要はないわね」

「……貴方、気に入らないわ。“炎の……連鎖”」


 同時に数珠繋ぎになった炎が私に向けられる。

 けれどそれを一瞥して、私は薙ぎ払った。


「な! だって今のは風の魔法……貴方、召喚魔法の使い手じゃ……」

「だから風でも竜巻でも召喚できるの。つまり私はこの世界、もしくは異世界に存在する脅威そのものを呼んで、攻撃が出来るの。もっともめったに使わないけれどね?」


 目の前のリリ・バードが蒼白になるのが分る。

 彼女は分ったのだろう、私の力の本質的な脅威が。


「く、ここまでにしておいてやるわ」

「あら、逃すと思っているの? 折角来る様にわざとトト・ウッドと戦うのに」

「……まさか」

「そう、自分から敵を探しに行くのが面倒でしょう? それに決着がつくまで二人がかりで邪魔する奴らも倒せるし」


 にやぁと悪い笑みを浮かべる私に彼女は逃げ出そうとする。

 それに私は、召喚した。


「“雷”召喚!」

「ごふっ」


 大きな音がして雷が彼女の体に落ちる。

 まあどうせここからでれば直るから良いかと思って私は見送って、


「あ、えっと、助けてくれてありがとう」


 トトの魔法生物が私に話しかけてきたので一瞥して、


「所でこいつ、何でいつも手加減しているの?」

「いえ、何の事だか……」

「とぼけないで、こいつの本当の力は私に匹敵するでしょう」

「そうなのか? うーん、そうかもしれない」

「……自分の契約者の能力も分らないの?」

「俺はこう、その場その場で頑張るタイプだから」


 そこで私の魔法生物ココが現れて半眼でトトを見る。


「トトは天才タイプだから何となくでできちゃうの」

「……まあ、倒したいけれど倒せないからその状況を利用している所も私にはあるし、いいわ」


 私はそう結論付けて、地上に降りてトト・ウッドを地面に横にならせて、そこで時間が来たのだった。






 そしていつものように私は正義の魔法少年トト・ウッドと戦う、悪の魔法少女ココ・ベルとして魔法を使う。

 先日の事に関して彼はお礼を言ってきたがその油断を私は利用して、攻撃を仕掛けた。

 さすが悪の魔法少女な私。


「今日こそ絶対に倒す、そしてお礼なんか言わない!」

「あーら、貴方が油断していただけでしょう? いっけぇええ」


 そうしてまたいつものように戦って、それを邪魔しに来る奴らを蹴散らす。

 そんな二人はお互いの正体にまったく気づかぬまま、いつもの日々が続いていくのであった。



「おしまい」


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