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私の好きな人は。

私の好きな人は。

めちゃくちゃ短いうえに、ほぼ会話です。そして悲恋。

注意してください!!

「お疲れ。真奈美、悪いな。綾乃のお守り頼んじゃって」

 突然聞こえたその声に、私と目の前に座っていた綾乃は同時に教室のドアの方に視線を向けた。急いできたのだろうか、少しだけ息を切らした拓がそこにはいた。

「拓、お守りってひどいよ!」

 綾乃が少し頬を膨らませる。高校3年生だというのに、そのしぐさが似合うのは綾乃だからだろう。

「お守りだろ?数学の小テストの点数が悪くて、プリント出されてるんだから」

「拓だってぎりぎりだったくせに」

「ぎりぎりクリアとぎりぎりアウトじゃ、大きく違うんだよ。な、真奈美」

「…でも、拓の部活が終わるまでに終わらせられたし、綾乃も頑張ったんだよね」

「そうだよ!もう、さっき出してきたんだから」

「いや、それ絶対、真奈美のおかげだろ?」

「それは…否定できないけどさ。拓だって、テスト前には真奈美に縋り付くじゃん!」

「いいの!俺は真奈美と1年の時から親友なんだから」

「私だって、親友だもん」

「何、変なことで張り合ってんの?」

 私は呆れた声を出した。ふと、窓の外に視線を向ける。夜の到来が遅くなってきたとはいえ、4月の夕方は薄暗い。

「もう暗くなってきたし、帰ろうよ」

「そうだな、帰るか」

「うん。真奈美も一緒に帰るでしょう?」

 先ほどまでの言い争いが嘘だったように、2人は同じように私に笑みを向ける。

「ううん」

「え~なんで?」

「放課後デートを邪魔するような無粋なまねはしないの、私」

「真奈美だったら気にしないぜ、俺たち」

「そうだよ。一緒に帰ろうよ」

「う~ん。でも、今日はやめておくよ。ちょっと、寄るところがあるんだよね」

「そうなんだ…。残念」

 肩を落としたように言う綾乃。

「それなら仕方がないけど、暗くなるから気を付けろよ」

「ありがとう、拓」

「じゃあ、校門まで一緒に行こうよ」

 綾乃の言葉に私は首を横に振った。綾乃が首を傾げ、「なんで?」と問う。

「ちょっと、人を待ってるんだ」

「それって、彼氏か?」

「え!真奈美、彼氏できたの?教えてよ!」

「違うから。彼氏とかじゃないから」

「怪しいな。…ま、真奈美はすげぇいいやつだから、彼氏なんてすぐできるだろうけど。できたら教えろよ」

「……うん。もちろん」

「私にも教えてよね」

「拓に言って、綾乃に言わないわけないじゃん」

「うん。楽しみにしてる」

「いや、だから、彼氏じゃないからね。ほら、2人は暗くなる前に帰りなって」

「わかったよ。じゃあな。今日は綾乃のことありがとう」

「どういたしまして」

「じゃあね、真奈美。また、明日!」

「バイバイ」

 私は2人に手を振った。背を向けた2人はごく自然に手を繋ぐ。

 胸が苦しくなるのには気づかないふりをした。

 拓とは1年のとき同じクラスになってからの付き合いだ。女友だちとしては一番仲がいいと自他ともに認めている。私と拓は「親友」なのだ。だからきっと、私が拓に手を伸ばしても、拓はその手を振りはらわないだろう。けれど、「どうした?」と聞くはずだ。何も聞かれずに、微笑んで、手を握り返してもらえる「彼女」とは違う。

 この2年間、私が頑張って縮めてきた距離を「彼女」は一瞬で飛び越せるんだ。私はどんなに頑張っても、一番近くには行けない「友だち」でしかない。

 窓の外から、拓と綾乃の姿が見えた。寄り添って楽しそうに話している後ろ姿。


 私の好きな人は、私の大切な友だちの彼氏だ。


続くかもしれません。が、わかりません(笑)

こんな短いものを読んでいただき、ありがとうございました!!

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