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フィニアス  作者: Naoko
8/19

相槌

「モーリスの祖父は、ダカンレギオン族だ!」


突然、フィニアスが声を上げた。


 ノートン城に戻り、

フロースから、数日間に起こった事を聞いたフィニアスは、

「公爵家に、ダカンレギオン族の者がいる」

と、子供の頃に聞いたのを思い出したのだ。



「じゃあ、どうしてモーリスは、そのことを言わなかったのかしら?」


 フロースは、ノイと同じような子孫がいることを知り、嬉しく思うのだが、

モーリスの不可解な態度が腑に落ちない。



「さあ・・・色々な事情があるんじゃないのか。

 デュパール公爵家の男子は、絶えてしまったからね。

 モーリスは、公爵の従妹の孫で、次の後継者に決まったのはつい最近なんだ」



 フィニアスは、公爵家と親しくない。

というより、今の公爵は、かなり年を取っており、

公の場に顔を出さなくなって久しく、

交友関係を広げるどころか、親しかった者たちは死んでいき減少している。



 デュパール公爵は、長い間、自分のステイツを守ることに徹していた。

若者たちの出入りが少ない分、安定してると言えば、聞こえは良いが、

古い考え方に固執していると言った方が良い。


 そんな中、モーリスが、次の後継者に選ばれるのだけれど、

彼の祖父は異国人だったし、母親も平民だ。

父親を早くに亡くし、畑違いのところから連れてこられた若者には、公爵の荷は重いだろう。


 社交界でも、「学生なので、勉強に専念している」との情報しかなかった。

公爵すら顔を出すことが少なかったのだし、

話題にしても続かず、

「その内、現れるだろう」ぐらいのものだった。



 フィニアスも、気にしていなかった。


 公爵が別邸を訪れることは少なく、隣同士で揉めたこともない。

モーリスが徒党を組んで乗馬をしていると知り、驚いたぐらいで、

若者たちの些細な問題はあっても、公爵家での事なのだ。



 降って湧いたように現れた公爵家の若者。

そして、フロースの娘。


 ノートン城にも、春のような賑やかさが訪れたようで、

フィニアスは面白いと思うが、

フロースは、楽しむ気になれない。




 フィニアスは、肩肘をついて手の上に顎を乗せ、

フロースが、あれこれ話すのを眺めている。


眺めるだけで、聞き流す。

時たま相槌を打つが、好きなだけしゃべらせる。




 そうしながら、フィニアスは、不思議な気がしていた。

自分たちが、まるで、娘を心配する夫婦のようなのだ。


 ニノンはまだ幼い。

十年後、自分とアデールも、このように、ニノンのことで会話するのだろうか。


 いや、もし自分がフロースと結婚していたら、

ノイのような娘がいて、

モーリスに熱を上げ、

今、こうして、

フロースの話を聞いているのかもしれない。




 何故、フロースを行かせてしまったのだろうう。


何故、あの時、彼女を愛しているのに気付かなかったのだろう。


彼女が自分に恋しているのに気付いていたのに、それを深く考えなかった。


むしろ、気付かないふりをしていた。


そう、わざと、自分の気持ちに気付こうとしなかったのだ。





 「どちらにしても、ノイが公爵家と関係を持つなんてありえないわね」


フロースが、ため息をつきながら言った。



 フィニアスは、ふふっと笑う。



「そうだな・・・弄ばれるのがオチだ」


フロースは、厳しい目をフィニアスに向ける。



「分かってるよ。

 彼が大学へ戻る前に招待しよう。

 一度は会っておきたいし」



 フィニアスは、余計なことを言って失敗したと思い、

娘を思うフロースの真剣な眼差しに、

苦笑いしながら答えた。



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