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フィニアス  作者: Naoko
3/19

美しい家族

 「ノイが、プリオベール家の領地に興味がある?」


フロースの話に、フィニアスは驚いて聞いた。


「いいえ、そうではなくて、ノイは、草原と馬に興味があるのだと思うわ」



 それは、しとしとと雨の降る昼下がり、

ノイは、二人の従弟妹たちと広間で遊び、

フィニアスは、赤子を抱いてあやし、

妻のアデールは、『花のお茶会』の招待客のリストを作っている最中で、

フロースは、お茶を飲んでいた。


 ニノンと、三歳年上のネイサンは、

遊ぶ振りをしながら、大人たちの会話に耳を欹てる。



 それは、ニノンが自分のポニーの話をノイにしたことから始まった。

ノイが乗馬に興味を持ったので、

子供たちは乗馬の計画を立てるのだけれど、問題があった。


 三人目の子を産んだばかりの母親は、

フロースの里帰りに合わせて、子供たちを連れてディフォーレスト家に戻っており、

しばらくは、ここに滞在する。


それで、どうしようかと思っている所を、フロースに知られてしまったのだ。

これで、「ディフォーレスト家にも馬がいるのだから、ここで乗馬をしなさい」と言われるだろうと、がっかりしていた。



 フィニアスは、子供たちの様子を横目で見ながら笑顔で答える。


 「わたしは、数日後に領地へ戻るし、ノイを招待するのは構わないよ。

広い草原を走るのは気持ちがいいからね。

子供たちは、すぐにでも行きたいみたいだから、先に行けばいい。

フロース、君も一緒に行くんだろう」

「もちろん、そうしたいのだけれど・・・」と言ってアデールを見る。

「男爵夫人が留守の城にお邪魔するのは気が進まないわ」


 アデールは微笑む。

「アンティ・フロース、どうぞ行ってらして。

わたしは『花のお茶会』の準備があるから、ここに残るけれど、

あなたに、プリオベール家の領地を見てもらいたいわ。

ねえ、フィニアス」

そう言って、彼女はフィニアスの腕に手を掛ける。


 『花のお茶会』とは、ピクニック形式のパーティのことだ。

子爵婦人の自慢の庭で、毎年、花が満開になるころに、幾つかの大きなテントを張って行う。

フロースも以前、母の手伝いをしたことがある。

この準備はなかなか大変で、今は、兄嫁のソフィーと姪のアデールが手伝っているという。



 フィニアスは、妻の手に自分の手を乗せると言った。


「そうだな。

 ネイサンは乗馬が上手いし、ホースオブマスターのセスもいる。

 任せて安心だ。

 ノイは馬が好きなのか?」

「そのようね。

 あの子の育ったラーウスには、広々とした草原はないし、

 ロバがいるだけで、馬はいないのよ」


「馬を怖がらないんだな」

「ええ、怖がらないわね。

 あの子には、騎馬民族の血が四分の一入っているからかしら」


「ノイの目の色は、ラーウス人のものでもないと思うが」

「ダカンレギオン族の女の子だけに現れるんですって。

 最も、今は存在していない民族らしいけれど」


 フィニアスは、ダカンレギオンの名をどこかで聞いたような気がしたが、

子供たちが抱きついてきたので、それ以上は考えなかった。




 赤子を抱く父親、甘えるようにまとわりつく子供たち、その横で静かに仕事をしている美しい妻。


フロースは、この絵に描いたような家族にため息をついてしまった。



 もちろん、自分にも愛する家族がいる。

ところが、自分が生んだとはいえ、ラーウスの子供たちは騒々しい。

こんな穏やかな雰囲気とはかけ離れている。

しかも聡明なアデールは、夫より二十歳以上若いのに、

てきぱきと仕事をして夫を支えている。


アデールが自分に似ていると言われるのだけれど、

それは血の繋がった者同士というだけで、

能力には雲泥の差があるような気がする。

本当に、彼女と似ているのだろうかとさえ思う。


フィニアスが妻として迎えるのは、「人形のように美しい娘」と思っていた。

ところが、彼が望んだのは、こんな女性だったのかと感心する。

あの時の自分を思い出しても、彼が自分を相手にするはずなかったのだ。



 彼は自分をからかい、恋愛対象とは見てくれなかった。


彼の関心は、自分をラーウスへ送り、スパイスを購入することで、

そのために、ナイフの使い方を教えてくれただけだ。

おかげで、野菜や果物の皮むきは上手になり、料理は得意になった。



 そして彼は、今でも、自分をからかうのだ。


彼の妻は自分の姪だというのに、これでは叔母としての権威も形無しだ。

「その手には乗らないわよ」と思うのだけれど、

ノイがドキッとしたように、自分もそう感じないわけでもない。


フィニアスは、魅力的な男性で、

時を経て、円熟した大人の厚みも加わっているから、

おそらく、前にも増して、御婦人方を魅了しているのだろう。


「アデールも大変ね」と思ったりする。



 

 とにかくフロースは、子供たちを連れて、プリオベール家の領地へ向かった。

そしてこの旅が、ノイの内に秘められていた血を呼び起こし、

様々な問題を引き起こすとは、夢にも思わなかったのだ。



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